韓国・不動産市場が崩壊の兆候…建設会社の倒産続出に警戒、PFへの新規融資凍結

 ロッテ建設はみずほ銀行以外にも11月18日にはハナ銀行から2000億ウォン、韓国スタンダードチャータード銀行から1500億ウォンを調達したことを明らかにした。地元メディア、デジタルタイムズの22年11月20日付報道によれば、「系列会社であるロッテ物産と『ロッテ建設が貸出金を返済できない場合やロッテ建設の返済金が不足した場合は貸出や出資で補充する』」との約定までかわしていたという。

 これだけではない。22年12月19日には、1月2日と4日に満期を迎える2000億ウォンの超短期高金利(金利は10%)のCPを、サムスン証券を含む証券会社4社に発行。このローンを返済するためにその3日後、12月30日に転換権を行使できる高金利転換社債(CB、表面金利8.4%、満期金利10%)を発行したという。22年12月26日付の金融消費ニュースでは「さまざまな問題や副作用があることから、このCBはロッテなど大企業グループが近年発行していない資金調達手段です。ロッテ建設は依然として不動産PF関連の資金調達関連に苦労していることが認められます」と報じている。

 韓国政府は社債などを買い入れ、金融市場の安定化を図るために22年10月23日に「50兆ウォン プラスアルファ」の緊急支援を表明。ロッテ建設は23年1月9日、メリッツ証券から1兆5000億ウォンの投資契約を取り付けたことを発表した。メリッツ証券はロッテが推進中のプロジェクトでロッテ建設が保証するABCPなどの債券に投資するという。これに先立ちロッテホームショッピングから借り入れた1000億ウォンやロッテ精密化学の3000億ウォン、ロッテケミカルの5000億ウォンは返済したというから、当面の資金難の問題はとりあえず解決したようだ。

 しかし短期金融市場の信用崩壊による資金調達の悪化は単なる前哨戦にすぎない。すでに不動産バブルが崩壊し、その荒波は不動産会社や建設会社に押し寄せている。ロッテ建設は今後、ソウルのMagok MICE複合施設(3兆3000億ウォン相当)や仁川の巨大丹101駅周辺開発プロジェクト(1兆1800億ウォン相当)などを推進していくというが、資材高騰などのあおりを受けてどこまで利益を上げることができるかは未知数だ。さらに今後、完成するマンションの販売はマンション価格の下落や金利高騰でさらに厳しいものになっていく。韓国では住宅ローンの延滞率も10%を超えたという。韓国の不動産関係者の間では「今度どうなってしまうのかわからない」(中小不動産関係者)といった悲観論が飛び交っているという。おのずとPFのリファイナンスも再び難しい局面がやってくるかもしれない。 

 そのようななかで筆頭株主のロッテケミカルは前年度の決算で7584億ウォンの営業赤字に転落し、イルジンマテリアルズを2兆7000億ウォンで買収する。グループ会社を支援する余力がどの程度、残っているのかは不明だ。さらにロッテケミカルをはじめ他のグループ企業も信用格付けの引き下げなどで資金調達がますます難しくなっている。

 果たして韓国ロッテグループはこの難局をどう乗り越えるのか、大きな課題に直面している。

(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)