「韓国最大の復興工事」と呼ばれ、現代建設やロッテ建設など大手建設会社が進めていた首都圏の大規模開発事業、遁村住公アパートの再建プロジェクトでは、7000億ウォンのプロジェクト費用の借り換えができずに、危うく建設会社の自己負担で返済しなければならなくなりそうだったが、政府が金融安定化政策の一環で創設した債券市場安定基金を通じて満期日の前日に借り換えに成功し、難を逃れた。昨年9月に韓国ビジネス格付け(KR)は、ロッテ建設、テヨン建設、HDC現代産業開発、GS建設、大宇建設のPF偶発債務が大きいと分析した。「なかでもロッテ建設では多数のプロジェクトが進行中で、その多くは未着手の建設プロジェクトだ」(同)という。
「韓国信用評価によると、ロッテ建設の偶発債務(近い将来突発的な事態が発生すると債務となるもの)は6兆7000億ウォンを上回る。今月(11月)と来月(12月)はそれぞれ1兆3970億ウォンと3472億ウォンの手形などの満期がくる。来年第1四半期のうち返済すべき債務も1兆8696億ウォンに達する」(22年11月20日付デジタルタイムズ)
ところがロッテ建設は事業で確保できる現金性資産はそう多くない。現金性資産は6788億ウォンしかなく、追加の資金を確保しなければならない事態に陥っていた。そのようななかでロッテ建設はグループ企業から資金をかき集め、2022年10月から11月にかけて系列会社などから1兆1000億ウォンの資金を調達している。
10月18日には関連会社を対象に2000億ウォンの有償増資を行った。主要な出資先はロッテ建設の43.8%の株式を保有する筆頭株主のロッテケミカルが875億ウォン、第2位の株主(43.03%)のホテルロッテが861億ウォン、ロッテアルミニウムが199億ウォンだ。その2日後の10月20日にはロッテケミカルから短期借入金返済のため5000億ウォン借り入れている。さらに11月8日にはロッテ精密化学が3000億ウォン、その2日後にはロッテホームショッピングが1000億ウォンの支援を行っている。
韓国の連合ニュースTVが22年11月10日付で、ロッテ建設側の説明として「短期不動産プロジェクトファイナンスでの資金調達は金融環境が正常化されておらず、安定した財務構造を得ようとしたものだ」と報じている。
しかし、グループ企業へのダメージは大きく、ナイス信用評価は11月16日、資金調達に協力したロッテケミカル、ロッテショッピングをはじめグループの持ち株会社のロッテ持株、ロッテキャピタル、ロッテレンタルの長期信用格付けの見通しをこれまでの安定的からネガティブに下方修正した。同日、韓国企業評価もロッテ持株とロッテケミカル、ロッテ物産の無保証社債信用等級をすべて安定的からネガティブに引き下げた。
資金調達はグループ企業だけからではない。金融機関からも巨額の資金調達を進めている。日本のメガバンクのみずほ銀行は11月3日、ソウル市瑞草区蚕院洞のロッテ建設本社の土地建物を担保に3000億ウォンを融資した。「日本の金融機関が海外で、売却できるかどうかもわからないものを担保にとって融資するというのはあまり考えられない」(メガバンク幹部)というから、かなり異例のことだったようだ。みずほ銀行にこの融資について確認したところ、「融資をした事実も含めてすべてノーコメント」(同社広報部)と頑なに口を閉ざしている。みずほ銀行はロッテグループの持ち株会社、ロッテホールディングスのメインバンクでもあることから、取引先に対する経営支援のような意味合いがあったのかもしれない。