1月11日にニュースサイト「プレジデントオンライン」に掲載された、ひろゆき氏が書いた記事が話題を集めていた。昨年7月に掲載された記事を再掲載したものだが、そこで語られていた内容は、ひろゆき氏が役員を務める会社の採用面接時に、最終学歴がFランク大学卒だったとしても中学・高校の学歴が良ければ採用してきたというもの。採用面接で重要視されがちな最終学歴を気にしないという姿勢が注目を集めた。
そこで今回は、企業の採用事情などに詳しい人事コンサルタント会社・人材研究所の代表である曽和利光氏に、ひろゆき氏の発言が的を射ているか否かを解説してもらった。
「結論からいうと、ひろゆき氏の採用方針は非常に時流を捉えた的確な考え方だと思います。実をいうと、企業の採用担当者たちの間ではこの10年ほど『人事は最終学歴よりも中学・高校の学歴を見ろ』という指摘は、ずっと語られてきたことでもあります。ひろゆき氏は理由のひとつとして、『偏差値が高い中学や高校を卒業したのにFランクの大学に行ったり、最終学歴が高卒という人って、勉強をサボったりしただけで、けっこう地頭が良かったりする』と語っており、私もこれにはおおむね同感です。
というのも、昨今の大きな企業にはピープル・アナリティクスと呼ばれる、社員の行動や属性などのデータなどを収集・分析することで、業務の効率化を図ろうとする動きがあります。こうしたデータによると、中高時代にどんなことをしていたか、どこに所属していたかなどの事実が、実は実社会における仕事の成果に思いのほか直結しているという結果がいくつも出ているのです」(曽和氏)
曽和氏は、ひろゆき氏の語る中学・高校の学歴もさることながら、採用側にとって重要なのは、その時代をどう過ごしてきたかを見ることにあるという。
「個人的には中学・高校の学歴もそうなのですが、中高時代の時期そのものに着目するという姿勢が根本的に重要と考えています。というのも、アイデンティティという概念を提唱したアメリカの心理学者エリクソンが語ったように、その人らしさの基礎は思春期に固まってくるとされているからです。そのため、人からどう見られるのかを意識するようになった大学時代よりも、中高の時期を見たほうがその人物の素の人となりが見えてくると私は思いますね」(同)
「人からどう見られるのかを意識するようになった大学時代」という言葉が出たが、曽和氏いわく近年は最終学歴だけではその人物の能力を測れないケースが増えているという。
「最終学歴のレベルアップを図る目的で、自分の出身大学よりも偏差値ランクの高い大学院を出る、いわゆる『学歴ロンダリング』と呼ばれる行動を取る人も出てきており、決して悪いことではないですが、最終学歴だけでその人の能力がパッとわからない時代になってきた印象があります。
例えば、私が実際に人事として経験したことで言えば、採用試験で多用されているSPI総合検査の能力試験の偏差値は同じ早稲田卒の学生でも50から70と、その幅がかなりあったことがありました。これはつまり、『単純に早稲田卒だから優秀』とは語れなくなってきている証拠でもあります。こうした傾向が強くなってきた背景には、大学受験の形式がAO入試や推薦入試などと多様化してきたことが関係していきているでしょう。それ自体を否定する意図はまったくありませんが、こと就職面接の目線で見るならば、学歴というものからわかることがこうした多様化によって昔とは変わってきた現実は確実にあるといえます」(同)