なぜFランク大学卒を採用しても失敗しない?最終学歴より中学・高校を重視すべき理由

 最終学歴では学生を測りきれない実態があるにもかかわらず、今回ひろゆき氏が提唱したような目線はいまだに広く浸透していない。

「これは、日本の大企業における最終学歴の信仰がいまだにかなり強いからです。30~40年前、有名大学に合格するためには、過酷な受験戦争を戦って試験をクリアするしかなかったわけです。そのため、その時代を生き抜いて企業のトップの座に就いた人たちにとって、偏差値の高い大学に受かった学生はイコール過酷な壁を乗り越えた優秀な人間に見えてしまい、最終学歴という評価基準を堅持してしまうのでしょう。

 実は人事担当レベルでは中学・高校時代などを中心に人となりを見ているケースは意外と多いのですが、最終的な決断を下す企業のトップが最終学歴信仰に傾倒しがちなため、人事の意見が覆されてしまうことのほうが多いわけです」(同)

今、中小企業では高卒人材が人気な意外なワケ

 中小企業の人事採用では、ひろゆき氏の主張はどう映ってくるのか。

「どんな中学・高校を出たかという話からは少々ずれてしまうのですが、中小企業の世界は大企業と比べて最終学歴がどんな大学かをあまり気にしていないと思います。今や『大学全入時代』といわれるくらい大学への進学率が高くなってきた日本ですが、それゆえに『特に学びたいこともなく、なんとなく大学に行っている学生』もかなりいるわけです。そうした学生たちにとって、大学は専門知識を身につける場としてあまり機能していない場合も多い。このように学ぶことへの意欲が落ちてしまった大卒より、高校を出てすぐに社会に出なければならない高卒のほうが、社会で生き抜くための知恵とスキルをすぐに身につけたいという意欲が強い傾向があります。

 企業としてもそうした学生を採ったほうがメリットも大きいので、高卒は人気なのです。このように高卒人気はかなり高く、奪い合いの様相を呈しているので、そうした環境下でどれだけ効率的に優秀な人材を確保できるのかを考えたときに、今後中小企業がひろゆき氏の提唱する目線に着目することは、戦略として効果的だと思いますね」(同)

 会社の役に立つ人材を見分けるコツはほかにあるのか。

「『キャリアコンシャスな学生を避ける』ことがひとつの方法です。キャリアコンシャスとは、自身のキャリアに強く意識を向けている人のこと。近年は『何年までにどんなスキルを学んだほうがいい』など、キャリアの重要性を語ったビジネス指南書が巷にあふれていますが、こうしたものに触発されて、面接の場で『自分はこんなキャリア形成がしたいのでこんなスキルを学びたいです』と声高に語る学生は増えました。このこと自体は問題ないのですが、一方で、理想としている環境が揃わないとあっという間に不満が溜まってしまい、社内での反発心が強くなり、最悪の場合すぐ退職してしまうといった事態につながりやすいということもあるのです」(同)

 要するに、有能な人材を確保したいのであれば、有名大学を卒業しているといった最終学歴ばかりに目を向けるのではなく、その人物の本質を見極める必要があるということなのだろう。

(文=A4studio、協力=曽和利光/人材研究所代表)