大雪で立ち往生、充電できず電欠…「寒冷地でEV使用は危険」は間違い?普及例も

 たとえば、日産自動車を代表するEV「リーフ」は、公式サイトによればフル充電で最大約4日間も家中の電力をまかなえる。大雪下での立ち往生に耐えられるかどうかの直接の指標にはならないが、災害時におけるEVの有用性を推しはかる上での参考になる。

充電器の設置がどうなるかが最大のポイント?

 降雪地帯が多い北欧のノルウェーでは、2022年の乗用車販売におけるEVの割合が79.3%と8割近いシェアを獲得し、世界一のEV大国となっている。水力発電で賄う電力、石油・天然ガスによる利益、EV優遇政策などにより急速にEVへとシフトできたというのだ。日本でノルウェーとまったく同じEV推進施策を行うのは難しいが、日本のある降雪地帯ではEVを推進しているところもあるそうだ。

「雪国である長野県白馬村では、再生可能エネルギーによる電力を100%自給する取り組みを目標にし、EVを積極的に推進しています。白馬村の主力産業はスキー産業であり、このまま地球温暖化が進めば、必然的に白馬村の雪が少なくなってしまう、という危機感からEVを推し進めているのです。

 もちろん白馬村の例は、環境対策という側面が強いのですが、山間部でEVが利用できる設備を導入する意義はあります。都市部に比べて、土地に余裕のある地方では自宅にソーラーパネルを置きやすいですし、電気代をカットして充電できるでしょう。また地方だとガソリンスタンドまで遠く離れていることもあり、EVのほうが使いやすい、というケースもあり得ます」(同)

 白馬村の2021年度の電力自給率は111.5%と100%を超える数値であり、普通充電器、急速充電器も整備されている。そんな充電器の設置が今後のEV普及の課題になってくると諸星氏は指摘する。

「現状、EV用の充電器の設置は基本的に政府主導で進められています。つまりガソリンスタンドのように民間企業が参入できていないんです。そのため政府の方針次第で充電器の普及具合が変わることも考えられます。

 また日産と神奈川県が主導して県内に充電器の導入が進められた事例もありますが、急速充電器の耐用年数を心配視する声もあります。急速充電器は高い電圧を必要とし、地中に太い電線を設置する必要があるので工事が大変。しかも、昔に設置された充電器であればあるほど、充電できる量も少なくなりがちなんです。EV普及のためには、充電器問題に早急に取り組むべきであり、かつ企業が参入できて利益を出せるような仕組みにしないと継続的な充電器の維持、管理は難しいでしょう」(同)

 充電器の設置数、設備がままならなければEVは満足に動けない。それに雪国だと充電器ひとつないだけで死活問題になる可能性もあるだろう。最後に諸星氏は、今後のEV普及には技術革新も鍵になると語った。

「全固体電池という新しい電池の開発次第で今後のEVは変わってくるでしょう。現在、EVで広く搭載されている正極、負極の間が液体になっているリチウムイオン2次電池に比べ、全固体電池はすべてが固体でできています。全個体電池が一般的にEVへ搭載されれば、より軽量化、長寿命化を果たしEVがますます使いやすくなります。一朝一夕で開発できるものでもないですから素直にメーカーの開発手腕に期待したいですね」(同)

 メーカーと国、どちらの動きにも目を向けていきたい。

(取材・文=A4studio)