売上4千億円、カップヌードル「謎肉」製造…不二製油、有名すぎる黒子企業の秘密

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不二製油のHPより

 10月3日、あるTwitterユーザーがツイートした内容が話題を集めた。その内容は、「『日清カップヌードル』に入っている謎肉の正体は大豆ミートであり、それを生産している黒子企業『不二製油』の年間売上高が、驚きの4339億円を誇っている」というものだった。同ツイートは現在削除されてしまったものの、多くのリプライが寄せられ、その売上と反比例するような知名度の低さ、すなわち「黒子ぶり」に驚きの声が寄せられたのである。一方、「油脂系の食品業界では、不二製油を黒子と呼ぶには有名すぎるのでは」といった声も上がっており、同社の「知る人ぞ知る有名企業ぶり」がさらなる関心を呼んだ。

 そこで今回は、流通ジャーナリストでありマーケティングプランナーの西川立一氏に、食品業界の知られざる立役者である不二製油が一体どんな企業なのかを解説してもらった。

70年以上続いている食品加工業界の超老舗企業

 話題となった不二製油だが、どんな出自を持つ企業なのだろうか。

「不二製油は、日本を代表する総合商社である伊藤忠商事系の繊維商社から、1950年に分離して創業した食品素材加工会社の老舗です。61年には大阪証券取引所第2部市場に上場、1978年には東京証券取引所第1部市場に上場を果たしています。

 主に取り扱っている製品はパーム油などの植物性油脂であり、これらを原料としたチョコレート、乳化・発酵素材、そして大豆加工素材など業務用の食品素材も主力製品です。そのため、日本の食品業界には不二製油のつくった製品を使用しているところがかなり多く、業界内ではその名を知らない企業はいないといっても過言ではありません」(西川氏)

 気になるのは、それほどの実力を持った企業がなぜ一般的な知名度は低いのかということ。

「それは同社が他の企業向けに製品を製造しているBtoB企業だからです。例えば、不二製油は業務用チョコレートの原料製造で世界3位という圧倒的なシェアを誇っているのですが、消費者が知っているのは、同社から仕入れた原料を使って店頭に並ぶ製品を作る製菓メーカーのほう。

 江崎グリコや明治ホールディングス、森永製菓といったチョコレートメーカーの株式を保有していることから、そういった錚々たる有名製菓企業に商品を卸しているのはまず間違いないでしょうね」(同)

 名だたる有名製菓メーカーがお世話になっているという不二製油。一般消費者向けの製品をメインにしていないというだけで、実はかなり身近な企業だったわけだ。

チョコレートの世界シェア3位、大豆ミートの国内シェア1位

 業務用チョコレートの製造で世界シェア3位とのことだが、西川氏によると同社の新たな看板商品として注目を集めているのは大豆ミート関連だという。

「同社は大豆ミートの国内シェアで1位です。植物性油脂を使った製品が着目されがちな不二製油ですが、実は創業から間もなくの1957年から大豆研究に着手してきた歴史があります。以後、半世紀以上も研究を重ね、自社の植物性油脂の技術と組み合わせた大豆加工製品を世に送り出してきました。

 なかでもよく知られているのが、大豆ミートの素材である『粒状大豆たん白』を抽出する技術。これは牛肉、豚肉、鶏肉などに近い食感に仕上げた組織状の大豆たん白のことで、これらを加工したのが同社を代表する大豆ミート製品『フジニック』シリーズです。こうした大豆ミート系製品を使っていると思われるのが、今回SNSでも話題になった『日清カップヌードル』に入っている大豆ミート、通称『謎肉』ですね」(同)

 こうした商品たちを不二製油はどうやって開発しているのだろう。