10月14日、楽天カードがAmazon.co.jp(アマゾン)でのショッピング、各種サービスの支払いにおける楽天カードの獲得ポイントの還元率を一部変更すると発表し、波紋を広げている。対象となるのはMastercard(マスターカード)ブランドの楽天カードのみなのだが、従来はアマゾン利用時でも100円につき1ポイントもらえていたが、2023年1月5日からは500円につき1ポイントになるとのことで、実に5分の1の大幅減になるというのだ。還元率でいうと1%から0.2%に改悪されることになる。なおVisa(ビザ)、JCB、American Express(アメックス)といったそのほかのブランドに関しては上記の変更対象にはならない。
ネット通販事業で競合するアマゾンへの対抗策という見方もできるが、それならばなぜマスターカードだけが狙い撃ちにされたのかという疑問も残る。そこで今回は、ポイント交換案内サービスの開発を手掛ける株式会社ポイ探代表取締役・菊地崇仁氏に、楽天カード側の狙いについて聞いた。
今回の改悪は楽天がライバルのアマゾンの足を引っ張るために行った施策なのだろうか。
「結論からいうと、今回の楽天カードの還元率変更はアマゾンへの対抗策というわけではないでしょう。もし楽天側がアマゾンを意識して還元率引き下げを行うとすれば、もっと早い段階からそのような処置を施していたはず。ではどういった理由かというと、単純にマスターカードブランドの楽天カードを利用してアマゾンで買い物、支払いをした際に発生する赤字が大きくなってしまっており、それが今回の還元率引き下げにつながったのだと思います」(菊地氏)
楽天側の変更の意図を把握するには、まずクレジットカードの仕組みを理解しなくてはいけないと菊地氏は続ける。
「一般的にユーザーがクレジットカードを使って買い物、支払いをした場合、カード会社(イシュア)は、カードの加盟店を管理する管理会社(アクワイアラ)の端末を通して個々の加盟店と取引を行うことになります。イシュアはアクワイアラに一時的に代金を立て替えてもらい、後日ユーザーから支払われた代金をアクワイアラ側に支払う、というのが一連の流れとなっています。ただこの一回の取引でビザ、マスターカードなどの国際ブランドが定めたインターチェンジフィーという手数料を、イシュアがアクワイアラに支払わなければいけません。
そのため、国際ブランドが定めたインターチェンジフィーが高いと、イシュアの取り分は減ってしまいます。したがって今回、楽天カードがマスターカードのポイント還元率だけ下げたのは、マスターの手数料がビザなどと比べてとりわけ高かったためだと思われます。もしほかの国際ブランドも高ければ、足並み揃えて変更しているはずなので、マスターカードのみが高い金額で設定されていたのでしょうね」(同)
ただ一部の国際ブランドのみ還元率を変更するとなると、楽天側はシステムを根本から改変する必要があるのではないか。
「ポイント還元のシステムで一部だけ例外を作るとなると、かなり手間がかかる作業になるでしょう。しかし裏を返せば、それだけアマゾンの買い物で楽天カードを利用していた人が多かったということにもなります。
アマゾンで買い物することによって、アマゾンポイントが貯まるクレジットカードとして『Amazon Mastercard』『Amazon Prime Mastercard』というのがありますよね。前者は1.0%~1.5%、後者は1.5%~2.0%というポイント還元率となっていますが、楽天カードは関係なく1.0%。わざわざアマゾンのカードを作らず、すでに持っていた楽天カードをそのまま使ったほうがラクだということで、楽天カードでアマゾンのショッピングをしていた人がかなりいたということなんだと思います。そのため楽天カード側は利用者の母数をふまえて、ポイント還元率を下げたことで楽天カードから離れてしまう利用者がいたとしても、プラマイで考えて会社として利益になると判断したのでしょう」(同)