「SDGs謳い規格外品の野菜を流通→逆に農家を苦しめる」は本当?食品ロス問題考察

 確かに“やるだけ損”と申し出を断る農家の方もいる一方で、規格外品の問題は扱っている作物の種類によって取り組み方が大きく変わるため、ビジネスとして割に合うので事業者と提携する農家の方もいらっしゃいます。例えばラーメン屋と農家が提携してカットした長ネギの従来の規格外品を含めて流通させ、農家にもメリットがあるビジネスとして成立させているケースもあります。このように、結局のところ割りに合わなければこうした事業者と仕事をしなければいいわけで、ネット上で心配されているように、取り組み全体が農家の収入の妨げになっているというのは少々言い過ぎかもしれません」(同)

規格品と規格外品を混ぜる倫理的問題のある販売手法

 一部の悪質事業者によって、倫理的に問題視されるような事例も出てきているそうだ。

「一部の悪質な事業者は近年のSDGsブームのうまみを最大限に引き出すため、農家からA品やB品を規格外品として安価に買いたたき、これらを混ぜたうえで消費者に『規格外品セット』として売るといった問題が発生しています。要するに普通に売れるはずのA品、B品も、さも規格外品かのように謳ってセット売りするという看過できない事例もあります。

 消費者からすれば『規格外品セット』として売られていれば、すべて規格外品だと思い込むわけですが、そのなかにA品やB品も混ざっているので、『規格外品といっても、きれいな形でちゃんと美味しいものもあるんだ』という誤解を招くでしょう。そして、それが実情に即していない規格外品の過大評価を引き起こしてしまいます。本当はA品なのに、それを見て規格外品にもちゃんとしたものもあるんだと消費者が思い込んでしまうと、規格外品を買ったほうがお得だという認識が広まってしまい、本来売れていた規格品の売り上げが落ちる可能性が危惧されるのです」(同)

 実際、一部ではじわじわとA品、B品の出荷価格が下がり農業所得が脅かされかねない事態も起き始めているのだという。

「このようにA品、B品も規格外品のように偽って消費者を騙すような販売手法は問題です。とはいえ、私はA品とB品と規格外品を混ぜてセット販売すること自体は、積極的に行ってもいいと思っています。きちんとA品、B品、規格外品が混ざっているセットだということを公言して販売すれば倫理的な問題はないわけですからね。卵などでは少しずつ規格緩和が進んで、『不揃いパック』を受け入れる消費者が増えています。野菜などでも、正直に規格品と規格外品を区別せずに販売できれば、都市近郊の農地を効率よく使うことができ、安い物流コストで出荷できます。このような柔軟なアイデアで販売をしていくことが、これからの農業における食品ロス問題、ひいては食糧問題解決のひとつの道筋になるかもしれません」(同)

 規格外品の農作物を販売するということは、ひとくくりに良い・悪いと判断できるものではなく、野菜や果物の種類や販売手法によってケースが多様に変わってくるようだ。農業の食品ロス問題を考える上で、我々消費者も実情を知り、知見を深めていく必要があるのかもしれない。

(文=A4studio)