新築マンション価格は高くなりすぎて、購入できなくなっている人が多いのではないかと思われます。市場経済では、価格は需要と供給のバランスで決定されます。高くなりすぎて、需要が追いつかなくなれば、価格が下がるのは当然のことです。
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/523/2249sk.pdf
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2049sk.pdf (fudousankeizai.co.jp)
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いかに高くなりすぎているのか、東京カンテイの「年収倍率調査」をみると明らかです。東京カンテイの「年収倍率調査」は、各都道府県で分譲された新築マンション価格(70平方メートル換算)を、その都道府県の平均年収で割って算出しています。その最新の2021年版によると、全国平均の70平方メートル換算のマンション価格は4056万円で、全国平均の年収は454万円なので、年収倍率は4056万円÷454万円で8.93倍になります。
47都道府県のなかで年収倍率が最も高いのは、いうまでもなく東京都で、2021年には14.69倍に達しました。70平方メートル換算価格が8373万円で、年収が570万円です。これでは、平均的な会社員ではとても手が出せません。東京のマンションは富裕層、高額所得者のほか、共働きのパワーカップルでもない限り買えなくなってしまったといっていいでしょう。
富裕層、高額所得者、夫婦ともに年収の高いパワーカップルがそうそういるわけありませんから、東京のマンションが売れなくなって、価格が下がり始めるのは当然のことです。
問題は、この流れが東京の新築マンションだけではなく、全国に広がっていくのか、また中古マンションや一戸建てにも広がっていくのかという点です。これまで、住宅価格の上昇や下落は、まず東京の都心から始まり、それが都心の周辺や大阪、名古屋の中心部に広がり、やがて都心の郊外部、地方都市の中心部、そして全国に広がっていくというのがふつうでした。そのパターンを今回も引き継ぐとすれば、首都圏の都心部で始まった新築マンションの価格低下が、首都圏の周辺部に広がるかどうかが問題です。
先の不動産経済研究所の2022年度上半期の新築マンションのデータをみると、実は東京都区部だけではなく、東京都下も下がり始めています。周辺三県はまだ上がっていますが、上昇率は低くなっています。一方、近畿圏をみると、2022年度上半期の新築マンション平均価格は4567万円で、前年同期比0.6%の上昇です。この数値なら上昇というよりは、実質的には横ばいであり、東京ほど鮮明ではないにしても、これまでの上昇ぶりからすれば、変化の兆しとみてもいいのかもしれません。
近畿圏も、いつ低下に動いても不思議ではありません。首都圏と同様に、まずは大阪市部や阪神間などの価格の高いエリアから下落の流れが始まるのかもしれません。不動産の価格は、市場メカニズムだけではなく、思惑で動く部分が大きいので、動くときには一気呵成に動く可能性もあります。需給関係以上に急速に展開することが少なくないのです。
実際にどうなるのかは予断を許しませんが、これまでの一本調子の上昇に変化の兆しが見られるようになったことは間違いありません。価格が下がり始めてからでは間に合わない可能性あるので、その動きをできるだけ早くキャッチして、迅速に行動を起こせるようにしておいたほうがいいかもしれません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)