「モーメントとは、Twitterで今話題になっている注目のツイートをまとめたものです。モーメントでは人気や関連性の高い最新トピックがまとめて表示されるため、『いま』起きていることを簡単に知ることができます」
「[話題を検索] タブ # をクリックすると、自分用にカスタマイズされたモーメントが表示されます。[トレンド]、[ニュース]、[スポーツ]、[エンタメ]、[ユーモア] などのカテゴリーのどれかを選ぶと、関連するモーメントを表示できます」
と説明しているが、IT企業役員はいう。
「Twitterに関していえば、キュレーション担当の部署が、ジェンダーやポリコレといったジャンルに力を入れている特定のメディアとホットラインを設けて日常的にやりとりをしているというのは、知られた話だった。話題のキーワードがアルゴリズムで自動的に拾われて表示されていると思われがちだが、SNSに限らずネットサービス全般にいえることだが、人の監視というのは入っていると考えたほうがよい。
それを『検閲』『操作』と呼べばそれまでだが、完全に自動化すれば差別やヘイト的なトピックが常に上位に表示されているという事態も起こりかねず、人による介入は必要な部分もある。検索サイトなどでは、大量の人員を目視による監視業務にあてている例もある。そもそも機械的なアルゴリズムも人がチューニングするものなので、『完全に自動』というのはあり得ない」
Twitterによる「トレンド操作」について、ITジャーナリストの山口健太氏はいう。
「Twitterのヘルプセンターによれば、トレンドはアルゴリズムで決定されています。ただ、背景情報の追加や不適切な投稿の除外など、人間の手による『操作』も入っているようです。そもそもアルゴリズムは人間が作るものなので、ユーザーにとって『アルゴリズムか人間か』の違いはあまり重要ではないでしょう。
どういう情報を優先的に表示するか、取捨選択をしていたのはTwitterのキュレーションチームとみられます。ヘルプの説明によると、会社としての収益を伸ばす責任はなく、Twitterの製品や事業とも独立しているとのことから、ヤフーやLINEのニュースサイトに近い存在といえます」
こうした操作を行うことは、SNS運営会社として適切といえるのだろうか。
「たとえばECサイトや旅行サイトには『おすすめ順』という並び方があり、その中身はさまざまな意図で『操作』されていますが、『安い順』や『高い順』といった分かりやすい基準による並べ替え機能も用意されているのが一般的です。
しかしTwitterのトレンドやニュースに並んでいる情報は、どういう基準で選ばれ、並んでいるのか外部からは分かりにくくなっています。この点もユーザーが不信感を募らせる一因になっているのではないでしょうか」
では今後、イーロン・マスク氏による買収によってTwitterはどのように変化していくのだろうか。
「マスク氏はこれまでのTwitterでは考えられないスピード感で、新機能を導入しようとしています。ただ、あまりにも動きが急すぎること、自身のツイートで放言が目立つことから、広告主を不安にさせているようです。
一方、マスク氏に反対するユーザーは広告主を巻き込んで対抗しようとしています。Twitterは売上の9割を広告に依存しており、広告主は生命線です。現状では1日に6億円近い赤字が出ているとのことから、まずは広告主の機嫌をうかがいつつ、コスト削減で経営を立て直すのが先決でしょう」
(文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト)