ただ、その基地局を全国に展開するには莫大な時間とコストがかかるとみられていましたが、20年8月に楽天はこの計画を『5年前倒し』しています。これほど大幅な前倒しができた背景として、ソフトバンクは『楽天が当社営業秘密を何らかの形で利用している可能性が高い』と主張しています。
一方、楽天は『ソフトバンクの営業秘密を当社業務に利用していたという事実は確認されていない』と主張しています。持ち出された情報が『営業秘密なのかどうか』という点で、両社の認識に相違があると考えられます」
携帯電話業界内での技術者の転職による技術持ち出しの実態は、どうなっているのだろうか。
「楽天モバイルは新規参入のキャリアということもあり大手キャリアからの転職者が少なくないようですが、一般的には直接競合となるキャリア間ではなく、通信機器やソフトウェア、サービスといった業界内での転職が多い印象です。
どの業界にもいえることですが、仕事の資料などを許可なく個人のメールやクラウドサービスに保存する『シャドーIT』が問題になっており、仕事を効率良く進めたいなど悪意がない場合もあります。今回の事件を受け、ソフトバンクは情報資産管理を再強化する方針ですが、持ち出しを完全に根絶するのは容易ではないでしょう」(山口氏)
(文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト)