楽天モバイル、転職者がソフトバンクから持ち出した技術情報を社内ネットで共有か

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楽天モバイルの公式Twitterアカウントより

 ソフトバンクの元社員・合場邦章被告が同社の技術情報を不正に持ち出し、転職先の楽天モバイルで利用した疑いで不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われている事件で、検察側は先月20日の論告求刑公判で懲役2年、罰金100万円を求刑した。合場被告は2019年12月にソフトバンクのサーバーに自宅から接続して営業情報が含まれるファイルを自身に送信し、その直後の20年1月に楽天モバイルへ転職。合場被告が持ち出したソフトバンクの技術情報を楽天モバイルが利用していた疑いがあるとして、ソフトバンクは21年、楽天モバイルと合場被告に対し約1000億円の損害賠償請求権の一部として10億円の支払い等を求める民事訴訟を提起している。

 合場被告がソフトバンクから持ち出したとされるのは、「4Gおよび5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報」(同社HPより)だが、楽天関係者は言う。

「合場被告はソフトバンクから持ってきた技術情報を楽天モバイル社内のPCのみならず、社内ネットワークに保存して他の社員が閲覧できる状況だった。しかも合場被告がソフトバンクのサーバーから情報を持ち出したのは、楽天モバイルへの入社が決まった直後というタイミングだった。これらの事実から、いくら楽天が“情報を利用していなかった”と否定しても通らない。

 合場被告の楽天モバイルへの入社が決まった19年当時、ウチは基地局整備が当初の計画から大幅に遅れて総務省から怒られるなど、かなりヤバい状況だった。他社の基地局に関する技術情報を“喉から手が出るほど欲しかった”というのは容易に想像がつく」

 楽天モバイルは19年、基地局整備の遅れなどを理由に総務省から行政指導をたび重ね受けていたが、合場被告が楽天モバイルに入社した20年には、基地局整備を計画より5年も前倒しして進めると発表。実際に基地局整備のスピードは加速し、翌21年には人口カバー率が90%に達した(合場被告は21年1月に同社を退職)。

他社から寄せ集めた情報による携帯事業

 その裏では、20年にはソフトバンクは、合場被告による情報不正持ち出しを警視庁へ申告し、同年8月には警視庁が楽天モバイル本社などを捜索。さらにソフトバンクは21年、楽天モバイルと合場被告を相手取り東京地裁へ民事訴訟を提起している。

「一貫して楽天モバイルは、『(合場被告が)前職で得た営業情報を弊社の業務に利用したという事実は確認されていない』と主張しているが、一連の客観的事実や経緯を並べれば、いくら否定しても無理がある。もともと携帯電話事業を手掛けていなかった楽天だけに、同事業に関わる人材は自ずと他の通信会社出身者などの“寄せ集め”となり、他社の技術者たちを高額年収を提示することで引き抜くケースもあったといわれている。

 どこまでが技術者個人のノウハウで、どこまでが他社在籍時に得たその会社独自の技術情報なのかという線引きはグレーな部分が大きいが、楽天モバイルが、転職してきた社員が前職で得た情報を社内ネットワークにアップしたりして共有しているというのは、業界内では知られた話。いってみれば、楽天モバイルは転職者を介して他社から寄せ集めた情報によって携帯事業を始めたというのが実情」(大手通信企業社員)

シャドーITの問題

 ITジャーナリストの山口健太氏は言う。

「楽天モバイルが立ち上げた携帯キャリア事業では、高価な専用ハードウェアの機能をソフトウェアで実現する『仮想化』を採用しています。この技術は大手3キャリアも一部導入していますが、楽天は仮想化を前提にネットワークを構築するという世界的に見ても新しい挑戦をしており、他社とは根本的にアプローチが異なります。