日本人の多くが、中学校で3年、さらに高等学校で3年、英語を教科として学んでいる。英語検定やTOEICなどの受験者数も増加傾向にあるにもかかわらず、英語を話せる日本人は多いとはいえない。
その原因の一つは、日本国内での生活において“英語を話す環境”を得ることが難しい点だろう。そんな日本の英語事情に一石を投じる日本語禁止バー「Sick!」が2022年10月1日、東京・西麻布と大阪・天満に同時オープンした。
「Sick!」を運営するのは、東京渋谷区に本社を置く株式会社クラウドエヌだ。代表の西山喜洋氏は、日本初となる相席ラウンジ「オリエンタルラウンジ」を生み出したことでも有名な人物である。西山氏に、英語バーをオープンした狙いと展望について聞いた。
「僕自身が過去に英語学習には多くの時間とお金を費やしてきました。英語教材、英会話レッスンなど、いろいろトライしましたが、予約の煩わしさなどもあり途中で挫折してしまい、いまだに英語力は初心者レベルです。英語の勉強が億劫になってしまっても、海外へ行った際には、拙い英語でもレストランでオーダーしたり、タクシーの運転手さんにオススメの場所を聞いたりすると楽しいと感じます。『こんなふうに実践で英語が学べたらいいのに』と思い、それならそういう場所をつくってしまおうと『Sick!』をつくりました。一言で言えば、僕が本当に通いたい店を形にしたのが『Sick!』です」
西山氏は自身の体験から、英語レッスンを受ける際の事前予約などの手続きが煩わしいと感じており、手続きや高価な授業料、教材などが不要なバーという業態がいいと考えたという。
「海外では、母国語が英語でない場合でも、学校や職場では英語という国もあります。しかし、日本では、学校教育で英語を学んでも外で英語を話すことに抵抗があるという人が多い。そういった方でも、『Sick!』に一歩足を踏み入れれば、スタッフもほかの客もすべての人が英語を話しているため、恥ずかしいと感じる必要がありません」
英語カフェや英語イベントなど、英語を話す場所はすでにあるようにも感じるが、西山氏は「Sick!」は日本初の業態だと強調する。
「店内では日本語は一切禁止です。既存の英語カフェやイベントでは、日本語が話せる環境ですし、仮に英語だけで話すとしても、英語がシャワーのように溢れた環境ではないわけです。『Sick!』では、スタッフとお客さんの会話が途絶えても、周りの会話が交差しているため、シャワーのように耳から英語が入ってくるので、海外のバーにいるような擬似体験ができます。日本語禁止のバーとしては、日本初だといえます」
うっかり日本語を話してしまった場合には、時間料金とは別料金でテキーラ(またはノンアルコールショット)の応酬があり、罰ゲーム感覚で日本語の使用を諫めるシステムになっている。日本語使用の罰則があると聞くと、「Sick!」への来店に不安を感じる英語初心者もいるだろう。しかし、英語レベルは初心者から上級者、ネイティブまで、英語に触れたいという人なら誰でも楽しむことができる点も「Sick!」の売りだと西山氏は胸を張る。
「『Sick!』のスタッフはバイリンガルやネイティブレベルの英会話力を持つ20代の女性スタッフが中心です。コミュニケーションスキルも高いスタッフが、お客さんの英語力に合ったレベルで会話をリードしますので、各々に英会話を楽しむことができると思います。英語力に自信がない方でも、わからない時やオーダーのときに使うフレーズをスタッフが教えるので安心して来店してほしいと思います」