マイナカード利権、総務省の外郭団体が一社独占受注…高額な費用見積もり提示

マイナンバーカードの公式サイト
マイナンバーカードの公式サイト

 岸田文雄首相は24日、「政府が進める健康保険証とマイナンバーカード(マイナカード)の一体化に関し、カードを持っていない人には別の制度を用意する」と表明した。共同通信が速報すると、ネット上では日本テレビ記者・ジャーナリストの清水潔氏などから一斉にツッコミが入った。

 

 そのほか、Twitterでは以下のように疑問の声が相次いでいた。

「マイナンバー制度を布教するために既存の保険証を廃止します←この時点でわからない 保険証は廃止するけどマイナンバー不保持者のために代替制度用意します←支離滅裂」

「それって紙の健康保険証を用意するってことじゃないの?振出しに戻ってるけど。マイナンバーカードを健康保険証にするより健康保険証にマイナンバー印刷すれば良いんじゃね」(いずれも原文ママ)

 マイナンバー制度の骨子は、公的個人認証の一元管理のため、マイナカードの普及を通じて保険証などのID機能を1枚のカードに統合集約して、「行政サービスを効率化し、国民の利便性を高めること」(総務省)だ。その中で、「マイナカードと健康保険証の一体化」は制度普及の要石と目されていただけに、今後物議を醸しそうだ。少なくとも「別の健康保険証制度を用意する」のなら、新たな予算が必要となる可能性が高い。

 マイナカードの普及を目指す「マイナポイント事業」では、カードの取得に対しポイントを付与する事業を展開。昨年12月の臨時国会で、関連補正予算として約1兆8000億円が計上されている。岸田首相の今回の方針転換が具体的にどのようなものを指すのか注目が集っている。

マイナカード職員証利用で年間費用100万円超

 マイナカードに各種ID機能を集約し、利活用することに中央官庁や自治体、政府関連団体の関係者からも、費用と競争・公平性の観点から疑問の声が聞かれる。

 例えば、一部の公共団体にはマイナカードを庁舎などへの「職員証」「入館証」として利用しようとする動きがある。

 マイナカードを「職員証」などの「統合IDカード」として利用する際、肝となるのがICチップだ。このICチップには、住基ネットなど公的個人認証に利用する領域のほか、空き領域として市区町村が条例を定め、当該市区町村の住民のために利用することができる「地域住民向け領域」や、行政機関や都道府県、市区町村、民間事業者その他の者が利用することができる「拡張利用領域」がある。

 政府はかねてから自治体などに、マイナカードにある「拡張領域の利活用」を強く推し進めている。ICチップの「拡張利用領域」への入力や管理システムの構築は、総務省と地方公共団体でつくる「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」が「マイナンバーカードアプリケーション搭載システム導入事業」として、ほぼ独占受注している。

 漏洩が許されない個人情報の入力と管理が必要となるため、民間事業者の参入が難しい部分はある。そのためJ-LISの単独受注となるため、その費用が適切かどうか比較検討できない状況だ。

 ある自治体関係者は次のように語る。

「J-LISにマイナカードを入館証・職員証として利用するシステムの見積もりを聞いてみたら、初期費用で500万円、運用費用は年間150万円と提示されました。

 職員の入退館管理だけならセキュリティーがしっかりしている無料の民間アプリもたくさんあります。データ漏洩トラブル時のリスクが他のIDシステムより高い、マイナカードを、あえて職員証として使う必要性と優位性がわかりません。職場のDXをはかるのにマイナカードアプリケーションの利用は必ずしも必須ではないと思うのですが……」