別の自治体幹部も「職員証を含めたシステムの構築を計画していましたが、イニシャルコストで300万円、ランニングコストは年100万円と見積もられたため、導入に二の足を踏んでいます。比較できる民間事業者はなく、これが適切な価格かどうか検証することができません。『国がそういう方針でJ-LISに受注させているから』では議会の同意は得られません」と困惑する。同様の話は複数の独立行政法人関係者からも聞かれた。
現在、我が国の独立行政法人数は87(今年4月1日時点)、市町村数は1724(同1月1日時点)となっている。ある中央省庁関係者は次のような疑問を口にする。
「例えば、健康保険証と同じく公的組織の職員証をすべてマイナカードに置き換えることになった場合、なぜ総務省の外郭団体ともいえるJ-LISに、1800を超える自治体や行政機関が費用を払う仕組みになってしまっているのでしょう。一連のマイナカード利活用事業の進め方に首をかしげる人間は霞ヶ関にも少なからずいます。本当であれば、官公庁こそマイナカードの利活用を率先して進めるべきなのでしょうが……」
行政の効率化、国民サービスの利便性向上は誰もが望むところだ。保険証との一体化を含め、マイナカードの利活用方法についてより多くの納得を得られる仕組みづくりがあらためて求められている。
(文=Business Journal編集部)