神戸家裁、なぜ少年A事件記録を廃棄?裁判所「すべて紙で保管」ルールの限界露呈

 

 

紙の裁判資料は”かさばる”?

 司法記者経験の長い新聞記者は裁判資料の”記録媒体”について、次のように指摘する。

「刑事、民事ともに基本的に紙媒体での記録が基本なので、資料を保管するためのスペースや労力が必要になってきます。大きな刑事事件ともなると、その資料は膨大な量になり、端的に言って“かさばる”のです。

 裁判資料は重要度に応じて保管する期間を5~50年と定めています。しかし、民事を含めれば毎年相当量の資料が蓄積されるわけで、紙の資料を保管し続けていくのは非常に大変な作業なのです。紙質が劣化したら保存するために複写しなくてはいけないのも煩雑な作業だと思います。

 一方で裁判所で取り扱う裁判資料は、そこに記されている個人情報の観点から、慎重な取り扱いが求められます。裁判資料に限らず、政府や中央省庁の公文書も同様ですが、デジタルデータだと内容を改ざんされる恐れや、情報漏洩の危険性も指摘されるので難しいところがあります。しかし、データのバックアップや複製や検索、管理、整理が比較的容易で、保管場所の省スペース化も図れる裁判資料のデジタル化は、将来的に不可避だと思います。神戸連続児童殺傷事件の裁判記録が廃棄された背景には、ある意味で紙媒体での資料保管の限界が示されているのではと思いました」

最高裁「裁判所の記録は原本、複写とも紙での保管が原則」

 最高裁判所事務総局広報課の報道担当者は「今のところ全裁判所の記録は原本、複写とも紙での保管が原則になっています」と説明する。その上で、「裁判のデジタル化、いわゆる民事・刑事訴訟手続きのデジタル化の話が報道されているかとは思いますが、(資料のデジタル媒体でのバックアップなどについて)将来的にはそのように移行していく可能性はあるとは思います」と語った。

(文=Business Journal編集部)