『純愛ディソナンス』視聴率等の数字は低調なのに絶賛される不思議な現象のワケ

 この5人を“ドロドロ要員”としてフル稼働させたことで、正樹と冴の純愛を描く作品でありながら、「それぞれが屈折した感情を抱えている」「何がどこへ向かって進んでいるのかわからない」と感じさせるカオスなムードが生まれた。

 木曜10時枠の前作『やんごとなき一族』は、東海テレビの昼ドラ(昼ドロ)を思わせる、笑いを含むけれんみだらけのカオスだったが、当作は笑いなしのリアル風味。視聴者にドロドロ劇でありながらも没入感を与えられているのは、制作陣が安易にけれんみを選ばず、笑いに逃げず、まじめにカオスを描き続けているからだろう。

まさかの相手に追い詰められた冴

 15日に放送された第10話では、さらにカオスなムードが加速。最終話の前に状況を整理する意味で、下記に挙げてみよう。

 正樹は碓井に父・秀雄が理事長を務めていた学校法人の土地売買契約を命じられ、5年ぶりに実家を訪れると、父は痴呆症になっていた。

 碓井の罠で代表の座を退いた路加は、なぜか愛菜美のもとに転がり込んで、奇妙な同居生活がスタート。しかし、愛菜美はまだ正樹との離婚届を出しておらず、路加が代表を務めていた会社を彼女の父・碓井が傘下に収めたことで、関係性が複雑化した。

 冴は母・静が倒れたことで、がん手術や再発の事実を知り、治療費用が必要になると、碓井が正樹との手切れ金・500万円を提示。冴は正樹に「私たちずっと親のことで傷をなめ合ってた気がする」「もしもあのとき私が『逃げよう』なんて言わなかったら、先生は今、苦しまずに済んだ」と別れを告げた。

 冴のシェアハウスメンバー・晴翔(藤原大祐)が小坂(筧美和子)を殺した罪で服役している加賀(眞島秀和)の息子であり、さらに小坂殺しの実行犯であることが発覚。晴翔は冴を学校の屋上に呼び出して襲おうとしていた。

 最終話は「正樹は晴翔からを救い出せるか」という絶体絶命の状況からスタートするが、その純愛はどんな結末が描かれるのか。

 第10話では、「どんなに強く願っても外せない鎖がある。たとえば追いかけてくる宿命とか、どうしても消せない親子のつながりとか。前に進めば進むほど、その重みは増し、いたずらに力を奪う。いつかその鎖を断ち切れる日は来るのだろうか」という正樹のモノローグがあった。

正樹も冴も悪いことをしていない

 その断ち切りたい“鎖”とは、義父・碓井、妻・愛菜美、親・秀雄のことだが、後者2人との関係性は、すでにおおむね解決済み。碓井との決着が最終話最大の見どころとなるだろう。

 一方の冴は、母・静との関係性が良化し、慎太郎(高橋優斗)との別れも完了。つまり、もはや正樹との純愛を貫くための障害はほとんどなく、描かれるとしたら「もう一度、小説家を目指す」くらいではないか。

 昨今の視聴者感情を踏まえると、『高校教師』のような心中を思わせる逃避行などのバッドエンドは考えづらい。もともと正樹も冴も、ほとんど悪いことをしていないだけに、すんなりハッピーエンドの可能性は高そうだ。

 むしろ、物語としては「このままで終わる気はない」と口をそろえる路加と愛菜美の再生、さらに、慎太郎への思いを貫いてきた莉子(畑芽育)の純愛成就の方がネット上は盛り上がるかもしれない。