地味で保守的な『石子と羽男』が夏ドラマの中で圧倒的な支持を集めた理由

 もう1つの注目は、第9話のラストが、石子の父で弁護士の綿郎(さだまさし)が御子神とつながっているようなニュアンスのシーンだったこと。綿郎も別件の不動産投資詐欺の案件を扱っていただけに、探りを入れていただけなのか。それとも悪事に加担していたのか。

 ネット上には「最後まで『困っている人を放っておけない』というお人好しのキャラであってほしい」という声が見られるだけに、最終回前に視聴者の心を大きく揺さぶる脚本・演出としては成功している。

 さらに、羽男が裁判官の父・泰助(イッセー尾形)と法廷で対峙するシーンなど、最終回らしく事件以外の見どころが目白押しだ。

続編は映画よりシーズン2が最適

 予告映像では、御子神が「法律って誰が作ったか知ってます? 力の弱い人間が勝つようにはできてないんです」と言い放つシーンがあり、「法律は、一体誰のためのもの?」という文字が表示されている。

 庶民の味方であるマチベンとパラリーガルが視聴者にどんな答えを提示するのか。保守的なジャンルの地味な主人公だからこそ、心にじんわりと染みるようなセリフが期待できそうだ。

 最後に今後の可能性に触れておくと、もともと1話完結でシリーズ化しやすいコンセプトの設定である上に、TBSが重視する配信再生数の好結果を見る限り、続編の可能性は極めて高い。

 スケールの大きい事件に挑む必然性がある映画化こそ、庶民的な今作には不向きな感があるが、逆に1話完結のシーズン2以降なら、俳優と脚本家のスケジュールとモチベーション次第で実現が可能。半径数メートルレベルの庶民的なトラブルを扱っているだけに、エピソードのバリエーションは豊富であり、すでに「次回はこれをやりたい」というアイデアが出ているのではないか。