みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーの経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者・松下一功です。
2年前からの新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業は業務改革や業態変更を迫られています。この危機を乗り越えるために試行錯誤を繰り返していますが、経営を守るひとつのカギになるのは「デザイン経営」だと考えています。
デザイン経営とは、特許庁が数年前から推進している経営手法ですが、残念ながら、あまり浸透していません。そこで今回は、デザイン経営とはいったい何なのか、デザイン経営の代表的な成功例などについて、お伝えします。
デザイン経営とは何なのかを解説するために、まずはキモとなる「デザイン」の意味を再確認しましょう。デザインと聞くと、「絵を描くこと」もしくは「完成した絵」などを思い浮かべるかもしれませんが、それは間違いです。辞書などで調べると、「構想」「計画」「意匠」といった複数の意味を総括する用語として紹介されています。
つまり、デザインとは「絵を完成させるためのプロセス全体」を指すのです。デザインを説明するのにわかりやすい例として、「北欧デザイン」があります。これは北欧諸国発祥のデザインの総称で、白やパステルカラーの明るい下地に、自然をモチーフにしたシンプルな構成と色使いが施されているのが特徴です。
そこには、夏が短く冬が長い、また冬の期間は夜が長くて昼が短い、といった北欧諸国の環境が深く関わっています。さらに、冬は大雪が降りやすく、外出するのも困難なため、必然的に1日の大半を家の中で過ごすことになります。
そこで、北欧諸国ではインテリアに機能性や耐久性のほかに「明るく快適に暮らしやすい」という特性も求められるようになりました。その結果、明るくてシンプルな北欧デザインが完成したのです。
デザインとは、絵を描く様子や完成品を指すのではありません。時代背景を調べたり、どんな色や柄だと明るい気分になれるのか、などについていろいろと考え、そこから導き出した要素を反映させた物を完成させるまでのプロセスが、デザインなのです。
デザインの意味を踏まえた上で簡単に説明すると、デザイン経営とは、自社の課題を解決するために試行錯誤や創意工夫を繰り返し、無事に解決させることです。
デザイン経営の意味について、特許庁のホームページにはこう書かれています。
「デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです」
世の中にはさまざまなレジェンド経営者の著書やビジネスを成功させるためのハウツーが広まっているので、ついそれらに頼ってしまいたくなるかもしれません。しかし、そのやり方は、本当に自社にとって最適でしょうか?
物が足りなかった終戦直後の日本では、大量生産を可能にするために工業分野の技術革新が進み、企業は大きな成長を遂げました。いわば、企業が抱える悩みも、進むべき方向性も限られていて、わかりやすかったわけです。
しかし、現代は物があふれていて、消費者は高品質で価格も同程度の商品群の中から気に入ったものを選ぶ時代です。それは言い換えれば、自分たちの個性を主張しなければ、その他大勢に埋もれてしまうということです。つまり、現代では企業が抱える悩みも、進むべき方向性も多様化しているといえるでしょう。