このようにマンションの買い手が、若い世代だけでなく高齢世代も加わって需要が増えた一方で、実はもうひとつのマンション価格高騰要因が「新規で開発できる物件があまり出てこない」という点です。これが不動産会社の方が口をそろえて言う近年のマンション価格高騰の一番の要因で、とにかく供給が少なくなってきているのです。
要するに新築のマンションを買いたい層は中高年や高齢者の参戦で人数が増加して、一方で都心やその近郊にはタワーマンションを建てられる立地のよい土地はもうそれほど残っていないという現象が起きているということです。
さて、このようなメカニズムを理解したうえで、マイホームが欲しいという若い人たちはこの状況でマンションを買うべきなのでしょうか? それを考えてみたいと思います。
ここから先は、あくまで私の未来予測の分析なので、その前提で聞いていただきたいと思います。あまり無責任な話をするつもりはないので、それなりにきちんと論じたいと思っていますが、あくまで予測には不測の事態も起こりえます。あくまでマンション投資は自己責任でお願いします。
その観点でずばり言えば、今回のマンション価格高騰は、バブル崩壊のときのように根拠のない価格高騰ではないと思います。それなりに住みたい人がいて、需給のメカニズムのなかで価格が上がっている。ですから買うかどうかを考えるポイントは、「10年後、20年後にも同じような需要があるかどうか」を予測することです。
その観点で言えば、同じ首都圏でも都心に近いとか、駅に近い、ないしは公共交通機関の便がとてもよい、そして買い物や外食などの環境も充実していて住みやすい立地にあるマンションであれば、未来のマンション価値はこれから先も変わらないことが期待できると私は思います。
そう考える理由は、時代が変わっても「そこに住みたい」と考える層がどんどん出てくるからです。それが今から20~30年前に首都圏近郊に戸建て住宅を買った層です。今、駅近の新築マンションに買い替えをしている中高年層の次の世代の予備軍がまだまだたくさんいます。40代くらいまでは何も苦に感じなかった自家用車付きの二階建ての戸建て住宅での生活が、これから先、徐々に厳しく感じるようになってきます。
言い換えるとこの戸建てからの買い替え層が存在する限り、マンション価格はたとえこれ以上上がらないとしても、中古価格含めて高止まりが期待できるのです。
ただ逆に言えば、このトレンドをあてにするのであれば、これから購入するマンションは価格や広さだけでなく、「高齢者になっても魅力的な物件かどうか」を検討軸に入れておくことが非常に重要です。そして実はこのポイントは、現在進行中のタワーマンションの人気とぴったり重なる要因です。
便利な場所にあって眺めもよく、徒歩だけで生活できる。豊洲や武蔵小杉といった街が突然タワーマンションで埋め尽くされたのは、この要件に合致しているからですし、最近人気の武蔵小山は「それに加えて東京圏屈指の昔ながらの商店街が存在している」ことが最大の強みです。
地震のときには「タワーマンションはエレベーターが使えず、高齢者にとっては地獄のような場所になる」という意見もあるでしょう。それはそうかもしれませんが、比較的裕福な高齢者なら、エレベーターが1週間停止するような事態ならば旅行に出かけてしまえばすむ話です。むしろ耐震設計はタワーマンションのほうが進んでいることから、普通のマンションと比較して買い手として避けるべき物件とはいえないと私は思います。
これからマンションを買う若い方にとっては、購入の段階では、それが自分がずっと住み続ける場所になるのか、いずれまたライフステージに沿って別の場所に移ることになるのか、まだどちらになるのかわからないという方が多いはずです。だったらなおさらマンションは売却できる資産価値を考えて購入したほうがいい。その点で心配がいらない物件であれば、たとえここまで高騰したマンション価格だったとしても、まだマンションは買ってもいいというのが私の考えです。
とはいえ一生の買い物ですから、マンション投資は慎重かつ大胆に。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)