だが、こうしたビジネス的戦略がすべてではないという。
「例えば、メインの生産ラインから外れた大容量商品は、生産コストが高くなるので、どうしても値段が割高になってしまう場合もあります。くだんのツイートで話題になった『ハーゲンダッツ』がいい例でしょう。
これは私見ですが、『ハーゲンダッツ』は“安くてそこそこうまいアイスクリーム”ではなく、“少々高くても豪華で満足感のあるアイスクリーム”という企業側のブランディングが強い印象です。要するに、割高でもそれに見合う美味しさを担保している自負があり、だからこそ価格を下げる必要がないのだと思います。
そして、そのスタンスは業務用の大容量商品でも同じ。むしろ、小分けパックが主流の『ハーゲンダッツ』からすれば、メインの生産ラインから外れた大容量商品は生産コストが高い商品です。ですから、割高な価格設定になったのではないでしょうか」(同)
一方、食品業界全体が価格高騰の危機にある今、大容量商品が一律で値上がりする可能性はかなり高まっていると重盛氏は指摘する。
「日経MJの7月27日の報道によれば、原価高騰の影響で2022年度に価格転換をして行かざるを得ないと答えた企業は48.8%にも上るそうです。2021年度の調査が5.9%だったことを考えるとかなり深刻です。これはコロナ禍による巣篭もり需要を加味し、スーパーなどの業界が消費者のことを考えて、値上げを我慢していたことが大きいです。ですが、徐々に外食産業に客足が戻り始めたのを見て、値上げに踏み切ったのでしょう。
価格高騰の原因としては、気候変動による農産物の不作と、それに伴う畜産業の減産などですね。また近年はウクライナ侵攻問題で、畜産の飼料であるトウモロコシが不足していることも大きな原因。ですから将来、大容量商品を含む商品全体の値段が高騰してくるのは避けられないでしょうし、大容量系の商品自体その数を減らしていくかもしれません」(同)
最後に、大容量商品が割安か割高かを見極めるためのアドバイスを聞いた。
「商品によってお得か否かを見極めるしかない……というところなのですが、企業の裏事情などは流石に一般の方ではわからない部分も大きいでしょう。そのときのひとつの指標になるのが、こうした裏事情を教えてくれるお店を選ぶということです。
東京を中心に展開中のスーパーであるOKストアなどは、詰め替え用洗剤のところにポップを立て、『原材料高騰で詰め替え用洗剤が値上げ中ですので、通常サイズを購入した方がお得です』などと情報を提示してくれています。こうした良心的な店舗を利用すれば、割高な大容量商品を買ってしまうリスクを減らせるかもしれませんね」(同)
「大容量=割安」という先入観は正しくないのだとアップデートしておく必要があるだろう。また、大容量商品の価格設定は企業や販売店によってまちまちという、この一事を心に留めておくだけでも、賢いお買い物ができるようになるのではないだろうか。
(文=A4studio)