大阪桐蔭高校が強い。強すぎる。
現在開催中の夏の甲子園、第104回全国高校野球選手権大会は、ついにベスト8が出揃ったが、なかでも圧倒的な強さを誇っているのが、史上3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭だ。
ここまでの3試合で、打っては29得点、守っては3失点と盤石の勝ちっぷりを見せている。特に攻撃陣では、2回戦の聖望学園高校(埼玉)戦で25安打19得点。3番の松尾汐恩が2打席連続ホームランを放つなど、その実力はまさに“銀河系軍団”と呼ぶに相応しい。これまでの戦いぶりから、優勝に死角なしの様相を呈しているが、残り7校の中からそんな最強軍団を倒せるチームはないのか、探ってみたい。
その前に、まずは近年の大阪桐蔭の公式戦での敗退を振り返ってみよう。2020年秋の近畿大会決勝で智弁学園高校(奈良)に3-7。21年春の選抜1回戦で同じく智弁学園に6-8。同年夏の選手権2回戦で近江高校(滋賀)に4-6。そして最後は今春の近畿大会決勝で智弁和歌山高校に2-3。
このうち、最初を除き相手チームはいずれも継投策をとっている(智弁学園と近江はともに2人、智弁和歌山はなんと4人もの投手をつぎ込んだ)。さらに、最後に投げた投手が速球を武器にしている点が共通しているのだ。
つまり、大阪桐蔭を倒すには超強力打線を抑え込み、僅差の試合に持ち込めるほどの複数投手を擁し、後半に速球系の投手が控えているチームが、勝機を見いだす条件になると考えられるのだ。この条件に当てはめてみると、浮上してくるチームが3校ある。
まずは準々決勝での対戦が決まっている下関国際高校(山口)だ。最速147キロの大型左腕・古賀康誠と、普段はショートを守る背番号6の右腕・仲井慎というプロ注目のダブルエースを中心とする投手陣は、ここまでの2試合で失点わずかに3。特に3回戦の浜田高校(島根)戦で先発した古賀は、重い球質の140キロを超える直球とスライダーを武器に6回2死までノーヒット。結果的に1安打されたものの、6回を投げて被安打1、6奪三振と完璧な投球で浜田打線を押さえ込んでいる。
一方の仲井は、切れの良いフォームから140キロ台後半の速球と見極めが難しい縦のスライダーが武器。浜田には1失点を許したが、初戦の富島高校(宮崎)戦では3回3分の1をパーフェクトに抑えている。打っても2試合で25安打14得点。本塁打こそないものの、強力打線で高い攻撃力を誇っている。
大阪桐蔭は今春のセンバツ(選抜高等学校野球大会)1回戦で左腕エース・冨田遼弥擁する鳴門高校(徳島)相手に1-3と苦戦。先日の3回戦の二松学舎大学付属高校(東東京)戦でも、途中から登板した背番号11の左腕・布施東海相手に4回3分の1で無得点、4安打に抑えられているように若干、左腕を苦手としている。
先発が予想される古賀は、まさに左腕。初戦で5回3分の2を投げ、与四球5だったが、続く浜田戦は6回で与えた四球はわずか1つ。調子が上がってきていることがわかる。早い回に下関国際打線が先制点を取り、中盤までリードを保てれば、右腕の仲井へリレー出来る理想の展開が待っている。面白い試合になりそうだ。
2校目と3校目に名が挙がるのが、準々決勝の第1試合で激突する仙台育英高校(宮城)と愛知工業大学名電高校(愛知)だ。この両校はどちらが勝っても“打倒・大阪桐蔭”を狙えるチームである。
まず仙台育英だが、投手層の厚さという点では大阪桐蔭に匹敵するものがある。実績抜群のプロ注目の最速145キロ左腕古川翼を筆頭に、左腕の斎藤蓉、2年生右腕の高橋煌稀と湯田統真、そして2年生左腕の仁田陽翔と、ベンチ入りした投手がすべて140キロ以上をマーク。スケールの大きい投手陣を形成している。