強すぎる大阪桐蔭、春夏連覇を阻止できる高校は?仙台育英、近江の勝機は?

 特に初戦の鳥取県立鳥取商業高校戦では、この5投手全員が登板し、見事な完封リレー。しかも相手打線に許したヒットはわずか2本で、14三振を奪う圧巻の投球内容だった。続く明秀学園日立高校(茨城)戦は自慢の投手陣が10安打を浴び4失点を喫したものの、4番手で登板した高橋が3回を無失点と好投し、チームの逆転劇を呼び込んでいる。

 打線は今大会、ここまでの2試合で25安打、15得点。スイングスピードが速い打者が多く、好投手相手でも力負けしない。そこに機動力を絡め、着実に得点を重ねていくのが特徴だ。特に明秀日立戦ではプロ注目の両投手・最速140キロ左腕の石川ケニーと最速142キロ右腕の猪俣駿太を攻略しているだけに、大阪桐蔭と対戦した際は攻撃陣の粘り強い打撃で得点を重ね、その上で強力投手陣をつぎ込みたいところだ。

 この春の近畿大会で智弁和歌山が大阪桐蔭を倒した試合では、先発が3回、2番手と3番手がそれぞれ1回、そして最後に投げたプロ注目の二刀流・武元一輝が4回を、わずか3安打、無失点に抑える好投をみせている。二遊間を中心に守備も堅い仙台育英なら、この試合の再現が十分狙えるとみている。

愛工大名電は打ち負けない打撃力が魅力

 愛工大名電も投手陣の顔触れが豊富だ。その中心となるのが、球威抜群の直球を投げ込む最速147キロ左腕の有馬伽久、本格派右腕の山田空暉、中日ドラゴンズのクローザーとして活躍した岩瀬仁紀を父に持つ岩瀬法樹の3人。

 ここまでの3試合で、失点は先発した有馬が23回3分の1を投げて喫した9点のみ。2回戦の八戸学院光星(青森)戦での5失点が気がかりだが、続く明豊高校(大分)戦では9回を被安打6の2失点完投。強打の相手打線相手に粘り強い投球を展開したことで復調気配とみる。逆に岩瀬&山田のリリーフコンビは計4回3分の2を投げて無失点。安定した投球を続けている点は心強い。

 一方の攻撃陣は、愛知大会で準々決勝までの4試合すべてでコールド勝ちするなど、打率4割超えの選手が6人並ぶ打線にスキはなく、下位からも得点を狙えるほど切れ目がない。初戦の星稜高校(石川)との試合で、プロ注目の好投手・マーガード真偉輝キアンに2回途中までに7安打を浴びせ10点を取った破壊力は相手チームにとって脅威。

 なかでも4番の山田、5番を打つエース左腕の有馬が、ここまでそれぞれ9打数5安打、11打数6安打と絶好調だ。特に山田は3回戦の明豊戦で先制の犠飛を放つと、その後の3打席すべてで出塁し、4番の存在感を示した。守っても伊藤基佑と市橋昂士の二遊間コンビを筆頭にハイレベル。走攻守すべてにおいてスケールの大きさがこのチームの最大の魅力。大阪桐蔭相手に多少の失点は許しても、打って取り返せるとみる。先発の左腕・有馬が中盤まで最少失点でしのげば、岩瀬―山田のリレーで逃げ切りたい。

近江はエース山田を万全の態勢で送り出せるか

 最後にどうしても名前を挙げたいチームがある。昨夏ベスト4で、今春のセンバツ準優勝の近江高校(滋賀)だ。最速149キロを誇る絶対的エース・山田陽翔の存在感が圧倒的。速球以外にも、直球と同じような球筋から鋭く曲がるカットボールは一級品。ここまでの3試合で24回を投げ失点6、奪三振は34を数えている。打っても4番を任され、3回戦の海星高校(長崎)との試合では試合を決める満塁ホームランを放った。山田以外の攻撃力も春からレベルアップしている点も見逃せない。

 ただ、山田に次ぐ投手陣が一気にレベルダウンする点は、大きな弱点となっている。大阪桐蔭と対戦することになるのは準決勝以降。そこまで疲弊させずに万全の状態で山田をマウンドに送りたい。

 結論として大阪桐蔭が負けるとすれば、準々決勝で下関国際、準決勝で近江、決勝戦で愛工大名電対仙台育英の勝者、と相次いで対戦するというパターンなのではないだろうか。

(文=上杉純也/フリーライター)