東京ミッドタウン八重洲、半分が空室か…オフィス供給過多が深刻、テナント集まらず

 では、東京ミッドタウン八重洲クラスの大規模ビルの場合、フロアの50%ほどしか埋まらなかった場合、100%埋まっている状態と比べると利益率にはどれほど差が出るものなのだろうか。

「家賃収入に対して固定資産税、損害保険料などの支出が2~3割程度だということを踏まえると、フロアが100%埋まっていれば利益率は7割ほどありますが、50%しか埋まっていない状態だと利益率は2割ほどになってしまうのではないでしょうか。

 また、自己資金ではなく借入金でビルを運営する事業者だった場合は、借入分の返済もあるのでさらに利益率は下がる恐れがありますね。三井不動産は、企業全体で一斉に借入を行っているため、東京ミッドタウン八重洲が空室のままでもいきなり赤字にはならないでしょうが、そうではない事業者の場合だと、一気に経営状況が厳しくなる可能性はありますね」(同)

コロナ前のオフィス不要論、2020年のオリンピックが要因か

 東京ミッドタウン八重洲規模のビルの賃料相場はどれくらいなのか。

「八重洲エリアですと、一坪で月3万7000円~4万円超で募集するのが相場ですね。東京駅に近いという利便性があるので高額になっています。とはいえ、東京駅の反対側である丸の内エリアは、一番高い頃は一坪で月8万円ぐらいという強気な価格設定をしていた時期もありましたので、それに比べるとリーズナブルだと考えることもできます」(同)

 仮に八重洲で1000坪ほどのオフィスフロアを借りると、月4000万円ほどの賃料がかかる見込みということになる。これを安いととらえるか高いととらえるかは企業によってまちまちなのだろうが、テレワークが広まった現在の状況を踏まえると、オフィスを構える必要性を感じないという企業は多そうだ。

「実はテレワーク以前からも、オフィスはいらないという風潮はありました。たとえば7、8年前に話題になった、就労人口の減少問題はいい例でしょう。当時は団塊の世代が大量に退職した時期でして、オフィスがいらなくなる、もしくは規模を縮小すべきという論説が目立ちました。女性の社会進出や高齢者の再雇用なども増えていますが、現在も就労人口は減少傾向です。また一時期注目を集めていたノマドワーカーのような特定の場所で働かなくても良い労働者の存在も、オフィス不要論に拍車をかけていましたね」(同)

 結局は新型コロナウイルスの影響が一番の要因でテレワークを選択する企業が増えたのだが、竹内氏によれば、テレワークの比重が増大したのは東京オリンピックの影響も大きいのだという。

「大企業では、20年に開催予定だった東京オリンピックの期間中に社員を出社させないため、19年頃からテレワークの準備が進められていたんです。都内の企業は、テレワークの準備が整っていた企業も多かったので、すんなりとテレワークに移行できた企業が多いイメージでした。そんななかコロナ禍になり、企業がどんどんテレワークを導入することになったのは周知のとおりです。しかし、もしコロナ禍になっていなかったとしても、東京オリンピック中のテレワークに利便性を感じた企業が多ければ、その後もテレワークを継続する企業は現れたかもしれませんね」(同)

 では今後、八重洲などのビジネス街はどうなっていくのだろうか。

「再開発の動きは鈍くなるのではないでしょうか。汐留、虎ノ門などのオフィス街も八重洲と同じで、テナントが集まらない状況が続いています。そうした空洞化したオフィス街では、タワーマンションの建設が増える傾向にあり、現に大阪や全国の政令指定都市では同様の現象が起きています。東京もそういう動きになってきそうですし、オフィスビルの建設は縮小していくかもしれません」(同)

 都心部全体の問題であるオフィス供給過多問題。東京ミッドタウン八重洲に限らず、空室が目立つビルは誘致対策が急務なのではないだろうか。

(取材・文=文月/A4studio)