村田製作所、隠れた超高収益企業の秘密…独自技術で世界シェア95%の商品も

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村田製作所のHPより

 リーマンショック後、村田製作所はスマートフォンやパソコンなどのITデバイスに使われる電子部品の需要を取り込んで業績を拡大した。現在、同社はそうした分野に加えて、自動車や脱炭素など、新しい分野の需要取り込み体制を強化しようとしている。それに円安による業績かさ上げ効果も加わり、2022年度の業績は緩やかに拡大する見通しだ。

 見方を変えると、村田製作所は新しい電子部品需要を生み出す重要な局面を迎えた。世界的にスマートフォンの需要は減少している。そのため、スマートフォン向けに生産が増加基調で推移してきた高付加価値の(他の企業では模倣が難しい)最先端の積層セラミックコンデンサの需要が減少している。その結果、村田製作所では製品が販売につながらず在庫が増えている。

 今後の展開として、先行きの不確定要素が増えるなかで村田製作所が世界経済の最先端分野でのモノづくりを迅速に強化できるか否かに注目が集まるだろう。これまで村田製作所は高純度の原材料を自社で生み出すことによって、新しい電子部品需要を創出してきた。その力のさらなる発揮によって、村田製作所が業績拡大を実現する展開を期待したい。

村田製作所の成長支える原材料からのモノ作り

 村田製作所は微細なモノづくりの力を極めて、新しい製品を生み出すことによって世界の電子部品需要を獲得してきた。同社(具体的には岡山村田製作所など)は、セラミックの原料であるチタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛といった原材料の製造技術を磨いている。具体的には、より小さく純度の高いセラミック原料の研究開発が強化され、生産体制が整備されている。その上で、村田製作所は積層セラミックコンデンサなどの電子部品を生産する。

 新聞報道などによると、村田製作所の国内生産比率は65%程度とみられる。その一方で、同社の海外売上比率は90.9%(2022年3月期)に達する。主要製品の世界シェアも高い。積層セラミックコンデンサは40%、ショックセンサは95%、弾性表面波(SAW)フィルタ(スマートフォンなどで周波数のコントロールに使われるフィルタ)は50%、マイクロバッテリで40%などの高シェアを誇る。このように、村田製作所のビジネスモデルの根底には、模倣困難な原材料の生産技術がある。

 国内で村田製作所は原材料の製造技術を高めた。それを用いて、新しい機能を持つ=高付加価値の電子部品をスマートフォンメーカーや半導体メーカー、自動車メーカー、バッテリーメーカー、機械メーカーなどに供給する。機械など部品を組み合わせて生産されるモノと異なり、原材料レベルまで部品を分解して構造を模倣することは困難だ。原材料の製造技術の向上をコア・コンピタンスにして村田製作所はリーマンショック後のスマートフォン需要を効率的に取り込むことができた。

 それに加えて、世界経済のデジタル化、コロナ禍発生後のテレワーク需要がパソコン需要を押し上げた。ビッグデータの収集や利用拡大、スマートフォンなどを用いた動画の視聴やSNSの成長などによって5G通信に対応したアンテナモジュール、フィルタの需要も拡大した。このようにして村田製作所のビジネスチャンスは拡大した。2022年3月期までの過去10年間で売上高や営業利益は増加し、売上高営業利益率は23.4%に上昇した。

世界的なスマートフォン需要などの減少

 ただし、足許では成長ペースにわずかながら鈍化の兆しが出始めた。2022年4~6月期の業績は前年同期比に比べて売上高、営業利益ともに減少した。営業利益率も低下した。特に大きな要因は、積層セラミックコンデンサやSAWフィルタなどの需要拡大を支えたスマートフォンの販売台数が増えていないことだ。