国立大で志願者数が一番多い大学はどこか。ここ数年、1万人台を少し超えたところで千葉大学と神戸大学が争っている。2022年度は神戸大だが、2020~2021年度は千葉大であった。公立大を含めると、2022年度は新設の大阪公立大学がトップに躍り出た。やはり、募集人員が多い大学が志願者を集める傾向にある。
千葉大は2019年6月に、2020年度の入学者から、学部・大学院ともに授業料を年額10万7160円も値上げすると発表した。53万5800円から64万2960円となり、受験生が激減するだろうという予測もあったが、2020~2021年度の志願者数は国立大でトップだった。当時、2020年度以降の全入学者に最大2カ月の海外留学を義務づけるため、授業料の値上げ分は主にその原資に充てるはずであった。在籍中の学部生の授業料は、2020年以降の入学者は64万2960円、2019年以前の入学者は53万5800円となっている。
ところが、2020年から新型コロナウイルスが世界を襲い、海外留学は事実上ストップ状態になった。もちろん、千葉大も例外ではない。2020~2021年度の全入学者に課すはずの留学は実施不能にならざるを得なくなったが、大学は値上げ分を返還しなかった。予定通り、留学支援の教材開発や教員確保などに投入したのであろう。
コロナの終息が期待できそうだった2022年度からは留学を開始できるはずだったが、コロナ禍が長引く中で、今度は急激な円安になった。留学先によって違うだろうが、欧米通貨のドルやユーロに対する円安が進んでいるだけに、円による留学コストが急上昇し、海外留学に今度は円安という暗雲が立ち込めているのだ。
また、コロナによるオンライン授業が普及していることも、海外留学制度に微妙な影響を与えている。最近では、そこに追い打ちをかけるようにコロナ感染者が急拡大している。
文部科学省は5年後の2027年をめどに、コロナの影響で激減したインバウンド外国人留学生をコロナ禍前の水準である30万人超に戻すとの目標を示した。しかし、各国間で優秀な留学生人材の獲得競争が激化している現状で、達成できるかどうか微妙だ。優秀な留学生の受け入れ態勢ができていない、と言われているからだ。
外国人留学生といえば、人手不足に対する補完策ぐらいにしか考えてこなかった企業も多い。円安は留学中は経済的メリットが大きいが、就職して本国に仕送りする際には不利になる。そのため、優秀な外国人留学生はあまり日本に来ないのではないだろうか。
また、海外留学するアウトバウンド日本人学生10万人超という目標も、千葉大の入学定員の半分にあたる1200人の留学計画を考えれば、それほど難しくないように思える。私立大では、全員を留学制度の対象とする新学部の開設が続いているからだ。
近年、海外留学が必須の国際系学部は激増している。学科ではなく学部全体が留学必須の主な大学は、国立大では千葉大だけだが、私立大では国際教養学部などグローバル関係の学部を擁する大学に多い。
留学必須の場合、留学先にはいろいろなパターンがある。国際教養大学のように、海外協定校との交換留学で多くの選択肢があるケースもある。たとえば、早稲田大学の国際教養学部の日本人学生は、世界各国の300以上の大学などから留学先を選べる。
また、立命館大学のグローバル教養学部のように、特定の大学(オーストラリア国立大学)との協定であるデュアル・ディグリー・プログラムが全面的に組み込まれているケースもある。一方、同志社大学のグローバル・コミュニケーション学部では英語コ―スと中国語コースがあり、留学先は英語圏か中国・台湾の大学となる。両者は対照的だ。