半導体の製造プロセスで用いられる最新の検査装置を開発するレーザーテック株式会社の成長期待が高まっている。最大のポイントは、同社が極端紫外線=EUVなど新しい光学の技術を用いることによって、これまでにはない検査技術を確立したことだ。現に、EUVを用いたマスクブランクスの検査装置に関しては、世界でレーザーテックしか生産できない。同社の受注は堅調に増加している。
当面、同社の検査技術に対する需要は増加傾向で推移するだろう。近年、世界の半導体業界では急激に需要が拡大している。現在では、メモリ分野などで需給が緩む兆しが出ているようだ。しかし、スマートフォンなどの性能向上のために、最先端のロジック半導体の開発は加速している。家電、自動車、送電網などのインフラ、工場の生産設備など、これまであまり半導体が使われてこなかった分野でもより多くの半導体が製品に搭載されるようになっている。半導体需要が急減する展開は考えづらい。それを追い風にレーザーテックの業績は拡大基調で推移するだろう。
1960年にレーザーテックは医療用のX線テレビカメラ装置の設計・開発を担うために設立された。創業当時の社名は有限会社東京ITV研究所だった。創業以来レーザーテックは、光を用いた検査装置の研究開発に特化した。当初、同社はX線テレビカメラ装置に次いで、磁気テープの張り具合を測定するテンションアナライザーの開発に取り組んだ。その特徴は、2つのカメラから得られる光信号を用いてテープの張り具合の適切さを検査することだった。
その上で同社が目をつけたのが、半導体分野だった。レーザーテックが光を用いた半導体のフォトマスクなどの検査技術を生み出す以前、検査は人海戦術で行われていた。当時、世界の半導体大国であった米国での検査体制は次のようなイメージだったと聞く。半導体の工場では、多くの人が顕微鏡をのぞきこみ、フォトマスクに欠陥がないか、微細なチリなどがついていないかを確認する。目視での検査を経たマスクはシリコンウエハーに回路を焼き付けるために使われる。ただし、私たちの集中力は常に一定ではない。検査に見落としがあると、半導体の生産性は低下する。
レーザーテックはそうした課題の克服に商機を見いだした。1975年にレーザーテックは半導体の検査分野に参入し、世界で初めてフォトマスク・ピンホール検査装置を投入した。それは、半導体の回路原板であるフォトマスクの材料(マスクブランクス)に生じる小孔を検査する装置だ。その上で1976年にフォトマスクの欠陥検査装置が世界で初めて投入された。フォトマスクの検査工程は自動化され、生産性は飛躍的に向上したと考えられる。世界からの需要にこたえるために、1979年に同社は米国に進出した。1980年代に入ると、国内の家電や自動車産業の競争力拡大を追い風にして日本の半導体産業は急速に成長を遂げた。レーザーテックのフォトマスクとマスクブランクスの検査装置需要は急増した。このようにしてレーザーテックはフォトマスク検査などニッチ分野で世界トップの技術を実現し、高成長を遂げている。
近年のレーザーテックの急成長を支えたのが極端紫外線(EUV)を用いた検査技術だ。ポイントは、同社が検査技術に特化し、世界最新の検査技術の実現をあきらめなかったことだ。半導体産業には「ムーアの法則」と呼ばれるチップの性能向上に関する経験則が浸透している。18~24カ月で半導体回路の集積密度は2倍になる(約2年で性能が倍加する)というものだ。それは、米インテルの共同創業者の一人であるゴードン・ムーアの提唱に基づいている。そのためには、半導体の回路線幅を小さくして(微細化を進めて)、より少ない電力で、より多くのデータを処理することが欠かせない。