グレードが高い=味がおいしいとは限らない…意外と知らない「コーヒー豆」の真実

コーヒー豆
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 コロナ禍でリモートワークが当たり前となり、自宅でコーヒーを飲む機会も増え、コーヒー器具が一通り揃った人も多いのではないでしょうか。また、せっかくならコーヒー豆にもこだわりたいけど、グレードの違いや選ぶ基準がよくわからない、という人も多いはず。

 そこで、神田錦町にある、障がいをもつ焙煎士やバリスタが働くカフェを兼ねた福祉施設「ソーシャルグッドロースターズ 千代田」の代表・坂野拓海さんに、提供しているコーヒー豆について聞きました。

「グレードが高い=おいしい」は間違い?

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――コーヒー豆(焙煎前の生豆)のグレードは何によって変わるのですか?

坂野拓海氏(以下、坂野) グレードを分ける基準は、大きく2つあります。1つ目は、先物取引で価格を決めるための基準となる「輸出基準」です。ただし、畑の標高、スクリーンサイズ、欠点率など、生産地によって基準が異なり、必ずしも官能評価されるわけではないので、グレードが高い=おいしいとは限りません。

 2つ目は、SCAA(アメリカスペシャルティコーヒー)やSCAJ(日本スペシャルティコーヒー)などの協会が定めている基準です。多少異なる点もありますが、ワインでいうテイスティングを行い、そこで80点以上を取ったコーヒー豆は、ここ数年でよく聞かれるようになった「スペシャルティコーヒー」に格付けされます。

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 スペシャルティコーヒーの下には、プレミアムコーヒー、コモディティコーヒー、ローグレードコーヒーと続きます。広く市販されているのは、コモディティコーヒーになります。

――グレードが高いほどおいしい、というわけではないのですね。

坂野 コーヒー生豆には、味わいや風味に悪い影響を与える「欠点豆」というものが混在しています。これが混ざっていると、雑味が出てしまうんです。豆が不揃いであれば、焙煎したとき均一に火が通りにくい、ということも影響しますし、混ざっている欠点豆の種類によっては、妙なすっぱさや土っぽい香りなどを感じやすくなります。

 前述の協会が定めている検定でも、欠点豆の含有率は審査の対象になっているんですが、実際にスペシャルティコーヒー認定を受けた豆でも、欠点豆がすべて取り除かれているということは、ほぼありません。コーヒー豆農園の努力で味わいに悪い影響を与える欠点豆は取り除かれているのですが、ソーシャルグッドロースターズでは、味わいや品質をさらに高めるためのハンドソーティングを行っているんです。

 どうせ飲むなら、本当においしいと思えるコーヒーがいいですよね。

欠点豆を徹底的に手作業で除去

 坂野さんが代表を務めるソーシャルグッドロースターズは、障がいのあるバリスタや焙煎士も働く福祉施設(就労継続支援B型)。福祉施設だとは感じさせないオシャレな店内、有名店に引けを取らないおいしいコーヒーが自慢です。

――ソーシャルグッドロースターズでは、どんなコーヒー豆を使っているのですか?

坂野 ソーシャルグッドロースターズではスペシャルティの基準を満たしたコーヒー豆を使うことが多いですが、加えて、取引されている豆のトレーサビリティ、社会的な公平性(豆の利益が働く人・地域や製造設備に還元され、生産地域の発展につながっているかどうか)や生産地の背景も重視して支援を必要としている農園と、長期的なウェルフェアトレードを社会貢献活動の一貫としているため、その限りではありません。

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 生産地から直接仕入れるコーヒー生豆は、60kgの麻袋に入った状態で届きます。それを1kgずつ小分けにして、ハンドソーディングしてから焙煎しています。

 ハンドソーディングとは、味や香りを損なってしまう欠点豆を手作業で分ける工程です。ソーシャルグッドロースターズでは、虫食いや未成熟豆といった欠点豆の種類を、すべてのスタッフが学び徹底的に取り除いています。