――種類も多い欠点豆を手作業で取り除くなんて、時間がかかりそうですね……。
坂野 一粒一粒見ていくので大変ですね(苦笑)。コーヒー豆1パック(200g)分にかかる時間は、平均して45分。その上で、漏れがないかを確認するため、ダブルチェックもしています。
その日のスタッフの人数や製造スケジュールにもよりますが、1日最大で5~6kgをハンドソーティングしています。5kgを焙煎した場合、水分が抜けて約4kgに減るので、20パック分となります。苦労してハンドソーディングした分だけ雑味がなくなり、クリアな味わいになります。また、豆の個性が引き立ちますし、口当たりもまろやかになるんですよ。
――ハンドソーディングは、どのお店でも行っているんでしょうか?
坂野 一般的に知られている「ハンドピッキング」が欠点豆を取り除く作業に当たりますが、ソーシャルグッドロースターズのように、ほぼ100%徹底的に取り除くことは難しいと思います。
まず、これだけの人手や時間をさくことができません。そして、当たり前ですが、コーヒー生豆は焙煎すると水分が抜けるので、購入した原材料の重量分の商品をつくることができるわけではありません。さらに、欠点豆を除くとなると、原価はもっと上がってしまいます。欠点豆を取り除くほど雑味はなくなりますが、同時にコーヒー1杯の原価も上がってしまいます。ソーシャルグッドロースターズでつくるコーヒーは、スタッフが多く非営利で運営する福祉施設だからこそ、実現可能なんです。
ただ、味の好みはそれぞれです。誰もが雑味のないコーヒーをおいしいと感じるかというと、そうとは限りません。それに、お店によって独自の配合・焙煎を施して、そこでしか味わえないコーヒーはたくさんあります。
今は個人店も多いですし、いろいろなお店を渡り歩いて、お気に入りの1杯を見つける旅をするのも、楽しいと思いますよ。
(構成=安倍川モチ子/フリーライター)