国際NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は3日(本部ニューヨーク・現地時間)、『ウクライナ:ロシア軍占領下での戦争犯罪が明らかに(Ukraine: Apparent War Crimes in Russia-Controlled Areas)』と題する報告書を公開した。同団体によると、聞き取り調査などによってウクライナのチェルニーヒウ、ハリコフ、キーウ(キエフ)地域のロシア軍占領地域で行われた、民間人に対する戦争犯罪(戦時国際法違反)の事例を記録した。
目撃者、被害者、ロシア占領地域の地元住民を含む10人に直接または電話で話を聞いたものという。民間人の“即決処刑”や性的暴行を含めた具体的かつ凄惨な内容で、同団体の欧州・中央アジアディレクターのヒュー・ウィリアムソン氏は「ロシア軍が拘留した人々に対する女性暴行、殺人、およびその他の暴力行為は、戦争犯罪として調査されるべきである」と強く訴えている。
報告書によると3月4日、ブチャで男性1人を道路脇にひざまずかせ、Tシャツを頭にかぶせた上で、後頭部を撃ち、射殺した目撃談があるという。また、チェルニーヒウのStaryiBykiv村のロシア軍が、「2月27日に少なくとも6人の男性を処刑した」との目撃証言あるとしている。
3月6日、キーウの北西約50 kmにあるVorzel村で、ロシア兵は、発煙手榴弾を地下室に投げ込み、避難所となっていた地下室から出てきた女性と14歳の子供を撃った。その2日後、彼女はその時の負傷がもとで亡くなり、子どもは即死したという。同地下室で彼女と一緒にいた男性が証言したという。
また、性的暴行の被害に遭った女性からの報告も受けているという。彼女は「ロシア兵士から、3月13日、彼女と彼女の家族が避難していたハリコフ地域の学校で、繰り返し性的暴行を受けた」と語った。翌日、女性は避難所から逃げ、ハリコフ中心部で治療やその他のサービスを受けることができたという。
被害者女性からの聞き取りによると、ロシアの兵士は3月13日、ロシア軍が占拠していたハルキウ地域の村、マラヤローハンに住む31歳の女性オルハさん(仮名)を殴打し、繰り返し性的暴行した。
ロシア軍は2月25日、村に侵入。その日、地元の学校の地下室に、オルハさんと少女を含む約40人の村人が避難していた。オルハさんは5歳の娘、母親、13歳の妹、24歳の兄と一緒にそこにいたという。
3月13日深夜ごろ、ロシア兵が強制的に学校に侵入。アサルトライフルとピストルを持っていた兵士が地下室に入り、全員に列を作るように命じた。オルハさんは眠っていた娘を抱いて列に並んでいたところ、ロシア兵の1人が、彼女に女の子を渡すように言った。彼女は拒否したが、兵士は兄の前に出て、グループの残りの人にひざまずくように命じ、さもなければ地下室の全員を撃つと言った。
ロシア兵は彼女を2階の教室に連れて行き、そこで銃を向けて服を脱ぐように命令し、こめかみと顔に銃をつきつけ、天井に向けて発砲。“口で処理すること”を求めたという。オルハさんは「(兵士が銃を突きつけ、発砲したのは)私にやる気を起こさせるためだ」と語った。オルハさんはその後、暴行された。
学校には暖房もなかったが、ズボンや下着を着ることは許されず、「上だけを着るべきだ」と言われたという。オルハさんは「私が服を着ている間、その兵士は『自分はロシア人だ』などと自身の名前を口にし、『20歳だ』と私に言った。私が『彼と一緒に学校に通った女の子を思い出させた』」などと話したという。