兵士は彼女に対して、地下室に行き、避難者の物資の略奪を手伝うように言った。彼女が断ると、兵士はナイフを手に「子供にもう一度会いたいのなら言われたようにしろ」と脅迫。再び彼女に性的暴行を加え、喉にナイフを置き、彼女の首の皮膚を切った。また彼女の頬をナイフで切り、髪の毛の一部を切り落としたという。さらに、本で彼女の顔を殴り、繰り返し平手打ちしたという。
オルハさんはこの時の負傷を示す写真を、ヒューマン・ライツ・ウォッチと共有した。兵士は3月14日に避難所を去り、彼女と彼女の家族はハリコフに避難。そこでボランティアが彼女に基本的な医療援助を提供し、被害を告発した。刑事告訴を準備しており、ウクライナの検察庁に提出する予定であるという。
同団体は、この件の他に、チェルニーヒウ地域の他の村と南部のマリウポリで、ロシア兵士による性的暴力に関する他の3つの申し立てを受けているが、独自に検証することはできなかったという。
同団体は以下のように警告している。
「ウクライナの武力紛争のすべての当事者は、国際人道法、または1949年のジュネーブ条約、ジュネーブ条約の最初の追加議定書、慣習国際法を含む戦争法を遵守する義務があります。ある地域を実効支配している交戦軍は、国際占領法の対象となります。国際人権法も適用されます。
戦時国際法は、捕らえられた戦闘員および拘留中の民間人に対する故意の殺人、女性暴行およびその他の性的暴力、拷問、および非人道的な扱いを禁じています。略奪や略奪も禁止されています。そのような行為を命じたり、故意に犯したり、あるいはそれらを支援し、殴打したりする者は誰でも、戦争犯罪の責任を負います。そのような犯罪について知っていた、または知る理由があったが、それらを止めようとせず、責任者を罰しようとしなかった軍の司令官は、司令官の責任の問題として戦争犯罪に対して刑事責任を負います」
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争後、現地の復興支援に携わった国際NGOの日本人関係者は語る。
「ロシア軍の士気が低く、統制が取れていないという報道を目にした段階で、こういう事態が起こることは予見できていました。これらの証言が事実だとすれば、21世紀の世界のリーダーの一角を成す国家の正規軍の行いとは思えません。ただロシアが、戦争犯罪の調査に協力する可能性は低いでしょう。容疑者の引き渡しに同意しないかもしれません。
民間人に対する虐殺は遺体という証拠が確実に残りますが、女性に対する被害は後にならないとわかたないことが多いです。ボスニアでも筆舌に尽くしがたい女性に対する人権蹂躙が起こりましたが、被害者たちが重い口を開くまでに時間が必要でした。今回のヒューマンライツの生々しい報告書を見て、それを思い出しました。憤りを覚えます」
(文=Business Journal編集部)