楽天が14日に発表した2021年12月期連結決算では、最終赤字が1338億円と過去最大を計上した。コロナ禍での巣ごもり需要によるインターネット事業などの伸びで、売上高は1兆6817億円と前年比15.5%増加したものの、携帯事業での基地局整備コストなどが収益を押し下げた格好だ。楽天はインターネット販売事業による「楽天経済圏」の要である楽天ポイントの還元率を下げるなど「改悪」で埋め合わせを図るが、顧客離れを加速しかねない。
楽天は決算会見で携帯電話の基地局整備を急ピッチで進め、当初計画から4年前倒しで4Gの人口カバー率96%を達成したと発表した。契約者数は550万人を突破し、「楽天トラベルなどグループ会社の人材を基地局整備に投入するなど、ガムシャラに進めてきた成果が出た」(楽天関係者)。決算会見で三木谷浩史会長兼社長も、会員数が「1000万、1500万、2000万になると思っている」と今後の成長に強気の姿勢を示した。
一方、その代償として携帯基地局の整備コストがかさみ、携帯事業単体では4211億円と赤字幅は倍増し、他の事業の収益を吹き飛ばした。楽天は22年12月期には、契約者数獲得のための1年間無料サービスが終了し、KDDI回線のローミング料が4月以降に減少することなどにより、収益が改善すると見込んでいるが、楽天4Gについては「つながりにくい」とのユーザーの声がネット上で少なくない。今後もより密度の高い基地局整備など設備投資が必要となるため、少なくとも短期的には赤字が見込まれそうだ。
携帯電話事業で今後の最重要課題は、次世代通信規格「5G」への対応をどう進めるかだ。三木谷氏は「5Gは周波数帯が低いところではメリットはない」と話し、高周波数帯域の獲得に意欲を示した。ただ、総務省が昨年から5Gの普及を見越して議論を開始した、携帯電話用の電波割り当て方式「電波オークション」が新たな課題として浮上している。
電波オークションは希望する周波数帯の利用権を競争入札にかけるもので、より多く入札した業者が周波数帯を獲得できるため、プロセスの透明性に長所があるものの、一部の資金力のある業者が周波数帯を独占したりするなどの短所がある。
携帯業界トップで資金力のあるNTTドコモは導入を歓迎しているが、楽天は20年4月に携帯事業に新規参入したばかり。基地局整備のコストでただでさえ余裕のない楽天にとって、電波オークション方式の導入は5G時代に既存の大手携帯3社に大きく差を開けられる決定打になるため、三木谷氏は「寡占化を復活させる愚策」と猛反対している。ある携帯アナリストによると、「楽天の三木谷氏は、同社の携帯参入を後押しした『総務省のドン』である菅義偉元首相など与党議員に直々にロビイングして、オークション導入を阻止しようと働きかけている」というから、その必死さがうかがえる。
携帯事業の赤字が重荷となっている楽天は、「楽天経済圏」を支える楽天ポイントで「改悪」が目立ち、ユーザーから批判が殺到している。
昨年6月以降、楽天カードで一部の電気・ガス・水道料金や税金の支払時のポイント還元が100円につき1ポイント(1%相当)から500円につき1ポイント(0.2%相当)に下がった。楽天市場などでのポイント付与も、今年4月から税込み価格から税抜き価格に変更した。