絶望の「みずほFG」再び旧3行でトップ分け合い、システム障害でも社外取締役が全員留任

 委員会設置会社への移行は3メガバンクで最初だった。みずほは指名委員会の4委員をすべて社外取締役にし、社外の役員に全面的に委ねることとなった。14年6月の定時株主総会で新体制が発足した。新体制の要となる取締役会議長には元経済財政政策担当相の大田弘子社外取締役が就任。社外取締役には元昭和電工社長・会長の大橋光夫氏、元新日鉱ホールディングス(現・ENEOSホールディングス)会長・野見山昭彦氏、元日立製作所会長の川村隆氏、甲斐中氏、元日産自動車副会長の安楽兼光氏が名を連ねた。

 現在、社外取締役にとどまっているのは甲斐中一人だけ。この間、新日鉄(現・日本製鉄)元副社長の関哲夫氏、公認会計士の阿部紘武氏の2人が社外取締役に就いている。18年4月1日、佐藤社長が会長に退き、後任にみずほ証券の坂井辰史社長がなった、証券子会社の社長からFG社長という前例のないルートだったことでトップ人事は二重の意味でサプライズとなった。

 坂井社長誕生のポイントは、本命を目された人物が持ち株会社の社長になれなかったことと、旧日本興業銀行の支配が連綿と続くことだった。木原・新社長も旧興銀の出身だ。興銀の支配が継続されるとしか映らないのは、人事の刷新という観点から見てもマイナスである。

 社外取締役は執行部があげてきた、自分たちに都合の良い人物を追認するしかないのが実情だという指摘もある。みずほFGも、社外取締役がトップを決めることに形式的にはなっているが、結局は執行部の意向が反映されただけだといわれ続けてきた。

 木原氏が旧興銀だからバランス上、会長は旧一勧の出身者がいいということになり、木原氏より年長である今井氏が会長の椅子に座ることになったのではないのか。みずほ銀の頭取が旧富士出身者だから、これで完全に旧3行のバランスの上に安住した人事ができ上がった。

 社外取締役によるガバナンス体制は、絵に描いた餅に陥りやすい。今回のみずほFGの内向きの旧態依然としたトップ人事の決め方を見ていると、みずほFGも例外ではなかったということになるだろう。甲斐中指名委員長は「危機的な状況での人選だから、バランスを取るとか、興銀支配を維持するということを指名委員会が考えるなら、それは指名委員として失格。適材適所で配置を考えた」と言い切っている。

 みずほFGのトップ人事は、「みずほFGは変わらない、変えようとしなかった」(関係者)ことを印象付けるだけで終わった。2000年9月の3行統合後に入行した「みずほ入行組」がトップになるまで旧行意識の改革は先送りされる、といった冷めた声が銀行内から流れてくる。

(文=編集部)

【みずほFGの社外取締役】

・甲斐中辰夫(82) 指名委員会委員長  元最高裁判所判事

・小林喜光(75)            元三菱ケミカルホールディングス社長・会長

                    東芝元社外取締役、取締役会議長

                    東京電力ホールディングス取締役会長

・佐藤良二(75)            公認会計士

・月岡隆(70)   監査委員会委員長  元出光興産社長・会長

・山本正巳(68)  報酬委員会委員長  元富士通社長・会長

・小林いずみ(63) 取締役会議長    元メリルリンチ日本証券社長