絶望の「みずほFG」再び旧3行でトップ分け合い、システム障害でも社外取締役が全員留任

 欧米では金融機関の取締役会が重大な不祥事を見逃した場合、巨額の損害賠償請求や重い刑事罰を科すことがある。リーマン危機の経験から公共性の高い金融機関の取締役は株主のみならず社会に対して一段と高い公的責務を負うとの認識からだ。だが、みずほの一連のシステム障害で社外取締役がどう対応したのか見えてこない。

 社外取締役の最大の仕事であるガバナンスの機能不全の責任をとって辞任を申し出た社外取締役は一人もいない。「システム障害という経営の根幹にかかわる問題解決に貢献できなければ社外取締役は全員交代すべきではないか」(企業ガバナンスに詳しいアナリスト)との声が出るのは当然の帰結である。

 小林いずみはANAホールディングス、三井物産、オムロンの社外取締役を掛け持ちする“タレント取締役”である。障害を重ねた元凶と呼ばれているシステムベンダーの一社は富士通だが、社外取締役の山本氏は富士通の元社長で利害関係者である。社外取締役がシステム障害の実態把握や問題解決にどれだけの時間とエネルギーを注いだのかとの疑問が湧く。

 みずほは「社外取締役の機能不全」を早急に是正するために、いくつかのアクションを起こす必要があったのだが、実際に行われたかどうか確認できない。取締役会の大半を、真の意味で「独立した」社外取締役で構成すべきなのに、そうはなってはいないのが実情だ。

 実務に密接に関わるパートナー企業の利益代表ともいえる社外取締役が経営陣と一体となって議決権を行使できないようにするためには、株式の持ち合いを解消するか、持ち合いを大幅に縮小することが必要だが、みずほFGにその動きはなかった。

「6人いる社外取締役をさらに増員することを検討する」と報じられ、1月17日、みずほ銀行は日本IBMで副社長を務めた下野雅承氏を招く人事を発表した。今後も大手企業の元経営者を軸に、6月の株主総会に向けて社外取締役の人選を急ぐことになるという。

 みずほFGの坂井社長の後任の木原氏は、問題を多く含んだままの現行の指名委員会が選んだ。同委員会は委員長の甲斐中氏と小林喜光氏、月岡氏、山本氏、小林氏の合計5人の社外取締役で構成されている。

 金融庁から「人材像について、十分な議論を行っていない」と指摘された取締役会、指名委員会が後任社長を選んだわけだ。従前のルールのままでいいのか、といった議論がきちんとなされた痕跡はない。指名委は金融界やマスコミの批判に頑なになったとの見方さえある。

 業務改善命令で、みずほFGは1月17日までに業務改善計画や経営責任を明確にする報告の提出を求められていた。スケジュールありきではなかったのか。木原・新社長、今井・新会長もこのスケジュールに合わせて、バタバタと決められた。次期社長を正式に発表する段階で「誰を、どういう基準で選考したのか」について、社外取締役は記者会見を開き、詳細にわたって説明することが強く求められていた。

 1月17日の木原・新社長のお披露目会見に同席した甲斐中氏は「外部から専門知識のない人がメガバンクのトップを務めるのは難しい」と発言。「外部人材をトップに据えるくらいの思い切った人事・組織改編が必要」という指摘を一蹴した。それでも甲斐中氏は「外部のCEOを招聘するという選択肢は当然あった。外部の調査機関に依頼して候補者をリストアップしてもらう段階では外部候補者もいた」と認めた。しかし、「専門知識のある人で、(みずほFGのトップに)適任という人はいなかった」とした。

お飾りでしかなかったのか

 みずほFGは14年4月24日、指名委員会等設置会社(以下、委員会設置会社)に移行した。指名・報酬・監督の3つの委員会を置く株式会社のことで、社外取締役を各委員会のメンバーの過半数にしなければならない上に、人事や報酬の決定で強い権限を持つ。業務執行は執行役が担うことで、経営の監視と執行を分離し企業統治を強める狙いが本来はある。