「文系学生となると、経済学部を受けたら同じ社会科系統ですから商学部も受けておこうと併願する人も増えます。しかし、理系は医学部と理工学部を受けようとはならないでしょう。医学部を目指している人は医学部を中心に受けますよね。薬学部を目指している人は薬学部を中心に受ける。早稲田は文系学部が多いので、自然と併願する生徒も多くなり、志願者も増えるのです」(安田氏)
だが、受験方式の改革という点では、早稲田も慶應も共に革新的だったという。
「早稲田は、文系では政治経済学部だけに大学入学共通テストで数学を導入しました。これによって志願者は3割減ってしまったのですが、同時に政経への第一志望者が増加する結果になったのも確かです。これはつまり数学を課すことによって、受験生のなかでは文系でありながら数学を勉強してでも政経に行きたいという志望度が高くなったわけですね。このような、他の私立大学にない科目を課すという改革を行うと、とりあえず政経も受けておくか、というマインドの受験生は減りますが、一方で第一志望者が増える傾向が出てくるのです。
こうした取り組みは慶應も同様です。慶應では入試科目に国語ではなく小論文を導入しています。そのため、小論文対策は受験に必須。ですが、小論文は他の私立大学併願のときに一般選抜ではほとんど使いません。そのため、慶應のための小論文対策をすることによって、慶應に入りたいという気持ちが高まるわけです」(安田氏)
では今後、早慶はどのような発展をしていくと予想されるのだろうか。
「W合格者たちが早慶のどちらを選ぶのかは、時代によってかなり変動があります。今は少し早稲田が勢いを取り戻していますが、おそらく今後もサイクルがあり、2校のあいだで人気が移ろうものだと思います。どちらにせよ、今後ともこの両校が私学の先頭を切ることは間違いないでしょう。また、早慶はお互いの存在を意識しているとは思いますが、実際最も気にしているのは世界の大学ランキングのはずです。おそらく、両校とも世界で戦える大学にしていきたいと考えていることでしょう」(安田氏)
(文・取材=海老エリカ/A4studio)