難関私立大学として名を馳せる早稲田大学と慶應義塾大学。早慶合格に向けて必死に努力を重ねた受験生のなかには、見事両校の合格を勝ち取るW(ダブル)合格者も多く出てくる。そんな早慶W合格者たちは、早稲田か慶應、どちらの大学を選ぶのか。
「早稲田と慶應」を特集した「AERA」(朝日新聞出版/2021年12月13日号)によると、平成の時代は慶應を選択する人が多かったそうだ。だが、それが現在は早稲田が巻き返しているというのである。いったいなぜ、このような逆転現象が起きているのか。
そこで今回は、早慶逆転現象の原因を知るべく、大学通信の常務取締役、安田賢治氏に話を聞いた。
今回のような早慶の逆転現象は、これまでにもあったことだという。
「実は昭和の時代では早稲田を選ぶ人が比較的多かったんです。特に地方の受験生は、スマートなイメージを持たれていた慶應より居心地の良さで早稲田を選ぶ人が多かったようですね。しかし、平成に入ると今度は慶應の人気が上がっていきました。
その原因の一つとして考えられるのが、慶應が1990年にSFC(湘南藤沢キャンパス)を設立し総合政策学部、環境情報学部といったまったく新しいコンセプトの学部を新設したことです。それまでなかったような学部をいち早くつくったうえに、学生全員にパソコンをもたせて授業をする体制をとり始めたことから多くの注目を集め、慶應の人気が高まっていきました」(安田氏)
だが、そんな慶應は近年、早稲田に比べて“ある点”が不足しているという。
「近年は、令和に入ってから特に慶應はグローバルイメージが薄まったのではないかと感じますね。大学全体でグローバルな取り組みをしているとは公表しているものの、慶應には“国際”や“外国語”といった名前がついている学部は存在していません。一方で早稲田には2004年に国際教養学部が設立されます。国際教養学部は全授業が英語で行われており、留学が必須の学部でもあります。加えて、学生の約半分が留学生です。
グローバルが意識される現代、早稲田のこうした改革の取り組みは、世間の需要に合致したのでしょう。昭和時代にあった早稲田のバンカラなイメージからの脱却に一役買ったのには、こうした戦略があったわけです。もちろん、グローバルな取り組みをすることは今の時代ある種、当たり前になってきてはいますが、それが中心となった学部が見えると人気は高まりますよね」(安田氏)
もちろん慶應でも学部改革に関して力は入れているようだが、早稲田など他大学とはとは一味違っている印象があるという。
「現在慶應は、共立薬科大学と合併したり、東京歯科大と合併予定であったりと医療系に力を入れているように感じられますね。ですが、慶應の受験生の大半は文系です。確かに大きな改革をしているとはいえ、慶應を目指している文系学生からすれば、“よし、受けられる学部が一つ増えたぞ”というような、受験願望を高めてくれる喜びは少ないでしょう。
同じく文系の受験者が多い早稲田が、文化構想学部や国際教養学部を新たに設立し、文系学部の改革を進めていることに照らしても、慶應側の狙いは目先の受験生ではなく将来の大学の在り方を考えての改革なのでしょう。ですから、どちらも魅力的な大学だというのは前提ですが、今、比較的に早稲田に惹かれる学生の割合が多いのは自然な流れだと考えています」(安田氏)
また、早稲田は単に学部改革を行うのではなく、受ける受験生の“併願意識”を刺激しているという。