夏の大規模野外ロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」(企画制作ロッキング・オン・ジャパン、通称ロッキン)が、千葉市蘇我スポーツ公園に移転して開催される運びとなった。2000~19年までの計20回、茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で開催されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で20~21年は中止となっていた。
ロッキング・オン・ジャパン代表取締役の渋谷陽一氏がロッキン公式サイトで5日、『2022年から、ロック・イン・ジャパンは千葉市蘇我スポーツ公園で開催します』と題する声明を発表した。
渋谷氏は「昨年の夏、収容人数を例年の半分以下にし、出来る限りの感染対策も講じたロック・イン・ジャパンを中止にせざるを得なかったことは、とても残念であり、私たちにとって大きなダメージでした」と述べ、年末フェス1回、春フェス1回、夏フェス2回の開催中止を決断せざるを得なかった経緯を説明した。
そのうえで「何とか開催できた昨年のジャパン・ジャムも赤字覚悟の興行でした。正直言って、経営的にもギリギリのところに私たちは立っています。もう中止や赤字覚悟のフェス開催は困難です」と同社の厳しい経営状況に言及した。
茨城からの移転に関しては「とても悩みました。何とかひたちなかでの開催を続けられないか、そのための方法を模索し可能性を探しました。しかし私たちは解決法を見つけられませんでした」と述べ、国営ひたち海浜公園が構造上の問題から、万全な感染症対策が難しいとの考えを示した。
一方で、移転先の千葉市蘇我スポーツ公園については「参加者は移動をせずにふたつのステージを観ることが可能で、ステージエリアの移動も広い導線を数百メートル歩くだけです。これなら密を回避して野外フェスを開催できる、そう判断してロック・イン・ジャパンの開催地変更を決しました」と説明した。
一方、SNSや匿名掲示板上などでは千葉移転に関し、「昨年夏のロッキン中止に絡む茨城県医師会や同県の対応が影響したのではないか」との声も散見される。
昨年のロッキンは8月7~9日、14・15日の5日間の日程で、感染防止対策のためにステージ数を例年の7から1、参加者を半数以下に削減して開催される予定だった。しかし、開催直前の7月上旬、茨城県医師会が「フェスによって新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される」などという趣旨の中止要請を、主催企業のひとつである地元FM局茨城放送に送ったのだ。地元局である茨城放送はこの要請を重く見て、ロッキンは中止されることになった。
その際、渋谷氏は「その解釈は余りに多様で基準が曖昧」などとコメントするなど物議を醸し、出演予定だった有名ミュージシャンからも疑問の声が上がった。
大手レーベル関係者は「確かに昨年のロッキン中止が、渋谷さんが会場として『ひたち海浜公園がコロナ禍のフェス会場として適しているかどうかを見直すきっかけ』になったのは間違いないとは思いますが、茨城県医師会の要請に対してどうのこうのというのは……。医療従事者がコロナ禍で大変な状況にあることは間違いなく、それはどうあっても優先されるのではないでしょうか」と語る。
一方、東京都内のイベント運営会社幹部は「タイミング的に社内で会場移転を決めた後だったでしょうが、昨年末に発覚した茨城県内の医師らによる“ワイン会”でのクラスターの発生は、ロッキンファンを始め、イベンター関係者の怒りを買ったと思います。私も正直、ロッキン中止を思い出し、フェアではないと思いました」と話す。