キャッシュリッチ企業・任天堂、歴史的な方針転換…ゲーム開発者の採用等に1千億円

 世界的な半導体部品の供給不足の影響を受け、スイッチを減産する。スイッチの通期の販売台数は150万台減の2400万台に下方修正した。22年3月期の売上高は前期比9.0%減の1兆6000億円、営業利益は18.8%減の5200億円、27.1%減の3500億円と減収減益の見込みである。

株価が上がらない理由

 使うあてのないキャッシュを多く保有することは、資金の出し手である投資家の視点からは「非効率的な経営」と映る。任天堂が、積み上がった現預金を活用して成長投資を積極的に行う方向に転換したのは、投資家にとって好材料だ。市場は任天堂株に前向きな反応をみせた。12月21日の終値は前日比1990円(3.72%)高の5万5500円を付けた。それでも、年初来高値の6万9830円(2月17日)に遠く及ばない。

 サプライズ投資計画を発表したのに、なぜ株価は飛び跳ねないのか。株主還元が少ないと見なされているためだ。2021年3月期の配当は第2四半期末が810円、期末が1410円の合計2220円である。22年3月期は第2四半期末が620円、期末は870円を予定しており、年間配当は1490円になる模様。実態は730円の減配だ。配当政策にも柔軟性が必要なのだろう。

 キャラクターという強力な資産を持っているが、この活用も急務だ。公式グッズ店「ニンテンドー・OSAKA(オオサカ)」を22年末に大丸梅田店(大阪市北区)に出店する。国内の公式グッズ店は「同TOKYO(トーキョー)」に続いて2店舗目となる。東京店では「マリオ」や「あつ森」の限定グッズが人気を集めており、大阪店もオリジナル商品に注力する。

 22年12月には米国で映画『スーパーマリオ』の公開が予定されている。ゲームに関心がない人との新たな接点づくりができるかどうかが、株価の先行きを占うカギを握る。

(文=編集部)