ゴルフ場最大手アコーディア、なぜファンドのマネーゲームの道具に?翻弄の連続

 12年1月25日、東証1部上場のゴルフ場運営会社、PGMホールディングスの臨時株主総会が開催され、神田有宏氏が新社長に就いた。アコーディアの取締役執行役員を務めていた人物が最大のライバルであるPGMのトップに座ったのである。神田氏はゴールドマンでゴルフ場買収の陣頭指揮を執ってきた。その実績が評価され、アコーディアに取締役として派遣されたが、11年5月、ゴールドマンとの提携解消を機にアコーディアの取締役を退任していた。

 PGMはゴールドマンと競ってゴルフ場を買収してきた米投資ファンド・ローンスター傘下のゴルフ場運営会社である。127コース(12年3月末)を持つ国内2位だった。ローンスターは11年11月、PGMをパチンコ・パチスロ機械大手の平和(東証1部上場)に売却。平和がライバル企業であるアコーディアの取締役だった神田氏をPGMの社長に招聘したのである。

 07年、パチスロ機メーカー、オリンピア(東京・台東区、非上場)の石原昌幸会長が平和を買収した。石原氏はアコーディア株の3.1%、オリンピア株を1.9%を保有する大株主(11年9月末現在)。石原氏がアコーディアの前取締役の神田氏をPGMの社長に起用した意図がみえてくる。アコーディアの買収だったのではないのか。

村上ファンドが参戦

 平和の子会社PGMとアコーディアの壮絶バトルの第1ラウンドは12年6月28日に開催されたアコーディアの株主総会で繰り広げられた。プロキシーファイト(委任状争奪戦)の結果、2日間に及ぶ前代未聞のマラソン総会となり、会社側が勝利した。

 第2ラウンドはPGMによるアコーディア株のTOB(株式公開買い付け)。買い付け期間は12年11月15日から13年1月17日まで。この時は旧村上ファンドのレノが参戦し、大量の株式を買い占めてキャスティングボードを握った。「PGMとの経営統合に向けた交渉の場に着くことと、自社株買いを行うこと」を要請する文書をアコーディアに送り、「イエス」ならPGMのTOBに応募しないが、「ノー」ならTOBに応募すると通告した。

 アコーディアの回答は「イエス」。レノがTOBに応募しなかったため、PGMのTOBは成立しなかった。

焦土作戦で買収を阻止

 壮絶バトルは最終局面を迎えた。アコーディア側は焦土作戦に打って出た。ゴルフ場を売却してPGMの買収意欲を削ぐのが狙いだった。国内企業のM&A(合併・買収)で焦土作戦が採られるのは、この時が初めてだったとされている。

 アコーディアは14年6月27日、東京都内で定時株主総会を開いた。PGMによる買収を撃退したものの、レノがTOBに応募しない条件としていた「PGMとの経営統合に向けた(前向きの)交渉」と「自社株買い」への対応など、重い宿題が残っていた。

 レノにお引き取り願うための作戦の立案が急務となった。保有する133のゴルフ場のうち90コースを特別目的会社(SPC)に1117億円で売却した。SPCはシンガポールに組成したREIT(不動産投資信託)のアコーディア・ゴルフ・トラスト(AGT)にゴルフ場を譲渡。AGTがシンガポール証券取引所に上場するというスキームである。

 これ以外にも、大和証券グループの大和PIパートナーズから新株予約権付ローンで200億円を調達。普通株に転換して大和PIはアコーディア株式の16.75%を保有した。ゴルフ場を切り離すことでPGMに買収を諦めさせることが第一の眼目だった。レノには持ち株を高値で売却してもらい、お引取りを願う。

 そして、最後にアコーディアは大和証券グループの傘下に入るというシナリオだった。株主総会で一連の議案の賛成が得られたことから、14年8月、AGTはシンガポール証券取引所に上場を果たした。