ミクシィは、2022年3月期の連結決算予想を下方修正した。売上高は前期比8~12%減の1050億~1100億円と、従来予想(1150億~1200億円)から100億円引き下げた。純利益は同75~84%減の25億~40億円の見通しで、従来予想(85億~100億円)を60億円下回る。
主力のスマートフォンゲーム「モンスターストライク」は競争が激化し、売り上げが下がったうえに開発本数も増え、コストがかさんだ。競輪アプリ「TIPSTAR(ティップスター)」の認知度をあげるためにテレビCMなど大型のプロモーションを展開した。想定以上にコストがかさんだ割りには、顧客の拡大につながらなかった。
20年6月に開始したティップスターは、競輪のネット投票を基本料無料で楽しめるアプリ。アプリ上で実際に車券を購入できる。株主への安定した配当を重視しているとして、年間配当110円は据え置く。21年4~9月期の連結決算は売上高が前年同期比12%減の515億円、純利益は34%減の61億円だった。
決算発表を受け、週明けの11月8日の東京株式市場で、ミクシィ株に売りが殺到。値幅制限の下限となる前週末比500円のストップ安の2245円で取引を終えた。業績の上方修正期待でこのところ買われていた反動もあって、下げがきつかった。その後も、売りは止まらず12月6日の終値は前日比19円安の1998円まで下落し、2000円の大台を割り込んだ。
サイバーエージェントのスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の売り上げが「モンスト」を上回った。新人トレーナーとなったプレーヤーが、実在する競走馬の名前を冠した“ウマ娘”と呼ばれるキャラクターを育成し絆を深め、共に成長しながらレースの勝利を目指していくゲームだ。
ゲーム内では実際の競走馬さながらのレースや、ウイニングランならぬ“ウイニングライブ”(レースの勝者がセンターを務めるライブステージ)など、オリジナルな要素も楽しめる。この「ウマ娘」が大ヒットした。サイバーエージェントの21年9月期の連結決算は、売上高が前期比1.4倍の6664億円、営業利益は3倍の1043億円、純利益は6倍の415億円と過去最高益となった。藤田晋社長は決算発表の会見で「ゲーム事業の新規タイトルのヒットが大きかった」と話した。
ゲーム事業の営業利益は「ウマ娘」のヒットにより前期比3倍の964億円となり、会社全体の9割を稼いだ。ネット広告事業も225億円と7%増えた。
対照的だったのがネットテレビ「ABEMA(アベマ)」を軸とするメディア事業だ。米ネットフリックスの壁は厚く、同事業の営業損益は151億円の赤字と6年連続の赤字となった。「ウマ娘」は美少女キャラと競馬を融合させたアイディアの勝利にある。競馬ファンとは異なる視点で競馬の魅力を再認識させ、ゲームとしてもおもしろくしたところに成功の秘密がありそうだ。
サイバーエージェントは「ウマ娘」で過去最高益を更新した。ミクシィはドル箱の「モンスト」が「ウマ娘」に喰われて失速。スマホゲームが両社の決算の明暗を分けた。ミクシィは巻き返しを図れるのか。
ミクシィは1997年、笠原健治氏が東京大学在学中にIT系求人サービスを始めた。現在は取締役会長でミクシィ株の持ち株比率は45.49%(21年9月末時点)と圧倒的。笠原氏のワンマンカンパニーである。
SNSサービスの草分けとなった交流サイト「mixi」で2000年代に成長し、13年に始めた「モンスト」をヒットさせた。プレーヤーが顏を突き合わせて一緒に遊べるモンストは、累計利用者数は5500万人を超えた。