関西スーパー株主総会で疑義浮上の異常事態、オーケーが裁判所に差し止め請求

関西スーパー
関西スーパーマーケット(「Wikipedia」より)

 関西の老舗スーパー、関西スーパーマーケット(関西スーパー)の臨時株主総会が異例の事態に直面している。上場来最高値という破格の条件でのTOB(株式公開買い付け)による関西スーパーの完全子会社化を先に提案していた関東のスーパー・オーケーと、後出しで非上場子会社2社との株式交換により関西スーパーの子会社化で合意していたエイチ・ツー・オー・リテイリング(H2O)が真っ向から対立。

 H2Oとの経営統合は関西スーパー株主に対する経済条件では明らかに劣ると考えられたものの、取引先株主に固められた盤石の安定株主比率を誇る関西スーパーにおいては、H2Oとの経営統合議案が圧倒的に優勢とみられていた。しかし、オーケーによる猛烈な追い上げと、株主にデメリットの多いスキームに取引先株主からも疑問の声が上がり、さらに米国の議決権行使助言会社2社からは、H2Oとの経営統合は株主に不利益があるという反対推奨が出されたことで、当日までどちらに転ぶかわからない展開となっていた。

 10月29日に開催された関西スーパーの臨時株主総会は6時間にもおよび、H2Oとの経営統合議案は僅差で勝利した。特別決議の要件をわずかに上回る66.68%という前代未聞の僅差での決着となった。総会結果を受け、オーケーはTOB提案を撤回。H2Oとの経営統合が可決したという結果に市場は嫌気を示し、関西スーパーの株価は急落。翌営業日の11月1日はストップ安を記録し、その後はH2Oとの経営統合を発表する前の株価水準も下回る状況となった。

 総会前には、関西スーパーは自社の株主に対してH2Oとの経営統合で自社の株価はオーケーの提示した2250円を上回り、最大3128円にもなり得ると吹聴してきたが、市場からは見事なほどの低評価を受けたかたちとなった。

 しかし、それもつかの間、総会からわずか1週間後の11月5日に、中立の立場で臨時株主総会の調査を行う総会検査役から、総会での投票で異例の経緯があったとする報告書が裁判所に提出されたというのである。

 その報告書には、総会検査役は経営統合議案が「きわめて僅差で否決となる集計結果を確認したが」「関西スーパーマーケットから、本総会の議決権行使のうち、『棄権』と取り扱っていた1名の株主の議決権行使の内容を、『賛成』として取り扱う旨の報告を受け、その結果、本議案は可決された」と記されている。

 オーケーはこの報告書を受け、議決権の集計結果に疑義があるとして、神戸地裁に株式交換の差止めを求める仮処分を申し立てた。仮にこの申立てが認められれば、再び関西スーパーにTOBの提案を行うという。

いったんは確認された「否決」

 関西スーパーの株主総会でいったい何があったのだろうか。株主総会が行われたのは、10月29日午前10時から。場所は伊丹シティホテル3階「光琳の間」だ。当日、その会場には100人を超える株主が集まった。

 総会が始まると、株主からは「正気の沙汰じゃない。なぜ業績ボロボロのイズミヤ、阪急オアシスと統合しなければならないのか」「統合による理論株価の算定根拠を説明してほしい」といった声が上がり、関西スーパーは苦しい説明を強いられることになる。

 株主からの矢継ぎ早の質問が続くなかで、議長は13時40分、質疑応答を終了し議案の採決に移る旨の説明がなされた。議長の福谷耕治氏は採決の際、「マークシートにご記入のない投票用紙をご提出いただいた場合、棄権としてお取り扱いいたします」「棄権は事実上、反対と同じ効果を持つことになります」と繰り返し注意喚起したという。