潜在力は原発約400基分…浮体式洋上風力発電、期待高まる 日本企業の技術が先行

不安定な再エネはV2Gで出力調整する

 風力や太陽光など出力が不安定な電源を電力系統に入れるには、出力変動を吸収する調整設備が必要になる。その際に有力なのが、電気自動車(EV)に搭載の蓄電池を活用する「ビークル・トゥー・グリッド(V2G)」だ。風力などからの発電が増えすぎた場合、EVの電池に充電し、逆に再エネの電力が不足した場合は、EVの電池を放電するというアイデアだ。

 このV2Gで使う急速充電器だが、日本が生んだ規格「CHAdeMO(チャデモ)」は世界トップの実績を誇る。14年に国際標準として承認されている。この規格を世界に広げることで、充電インフラの拡充と、EVから先につながるエネルギーシステムの心臓部を握ることができる。CHAdeMO協議会はEVの大市場である中国と協力して、大容量の「ChaoJi(チャオジ:超級)」という日中共同規格を策定しており、日本は中国市場に足がかりを作る良いカードも持つことになる。

 EVが増えると電力不足に陥ると指摘する向きもあるが、そもそも、世の中にあるすべてのEVが同時一斉に充電することはあり得ない。ある自動車メーカーの試算では、日本で10%がEVに置き換わると、再エネが100%になっても需給変動を制御する調整力が提供できるとされる。

株式市場も脱炭素銘柄として大手製造業を注視

 脱炭素というテーマではこれまで、ベンチャー系の太陽光発電事業者などに注目が集まってきた。しかし、CO2排出量46%削減の30年度まで10年を切り、50年カーボンニュートラルまで20年しか残されていない。

 大手証券会社のチーフストラテジストは「残された時間が少ないので、技術開発資金を豊富に持っている大手が有利」と話す。株式市場における現在の脱炭素ブームは、活況と失望を繰り返してきた過去の環境関連ブームとは雰囲気が違うと指摘する。

「水素銘柄として注目を集めるごとに期待外れを繰り返してきた岩谷産業は、今年1月、1989年の上場来高値を31年ぶりに更新した。脱炭素に対する市場の本気度が違う」

 2020年の全世界における太陽光パネル出荷量は、国別では中国が全出荷量の67%を占めている。日本がこれから巻き返すのは至難の業だ。太陽光パネルをめぐっては中国・新疆ウイグル自治区での強制労働も指摘されているが、その問題を抜きにしても、「脱炭素→再エネ→太陽光」という図式はあまりに古い。そろそろ太陽光発電頼みの政策はやめて、日本の製造業の強みをフルに活かせる浮体式洋上風力発電にシフトしたらどうだろう。

 20年12月に政府が取りまとめた「洋上風力産業ビジョン」では、着床式と浮体式合わせて30年までに10GW、40年までに30~45GWに増強する目標が掲げられている。

(文=横山渉/ジャーナリスト)