現地でシェア1位の中国事業について見ておこう。中国・香港・台湾で構成するグレーターチャイナの21年8月期の売上収益は前の期比16.7%増の5322億円、営業利益は52.7%増の1002億円。売上収益、営業利益ともに過去最高となった。
中国では外資系アパレルへの逆風が強まっている。人権弾圧問題に懸念を表明したブランドは不買運動にさらされ、こうした有名ブランドの受け皿となった地場のブランドが存在感を高めた。外資離れの影響と分析されているが、「ユニクロの商品の人気も以前ほどではなくなった」との現地のバイヤーの声がある。
中華圏の業績見通しについて22年8月期の上半期(21年9月~22年2月)は減収減益を見込む。柳井社長は環境の変化を認めており、「(ローカルブランドの伸長の)影響をあるかも知れない」と述べ、「今後は大都市だけでなく、ユニクロの知名度の低い2、3級都市にも出店していく」と戦略の見直しを示唆した。
11月6日、北京市で初めてとなるユニクロのグローバル旗艦店が、北京のファッションを牽引する繁華街「三里屯」の一角にオープンした。中国の旗艦店としては上海の2店舗に続き3店舗目。今後は、年間100店ペースで出店するという高い目標を掲げ、地方都市に店舗網を広げていく。
ユニクロが中国に進出してから30年。180あまりの都市で850を超える店舗を展開しており、日本の総店舗数を上回る。今後、中国事業への傾斜は強まることはあっても減速することはなさそうだ。
国内ユニクロ事業は消費税の総額表示への切り替えに合わせて、実質的に約9%の値下げを実施した割には、客数は伸びていない。国内は「事業改造の年」(柳井氏)とし、企画・生産・販売の仕組みをつくり直した。22年8月期は国内は減収・減益になるが海外のユニクロがそれを補う。
柳井氏は「グローバルで商売してきたことが生きてくる」と語る。海外ユニクロはグレーターチャイナが下半期、順調な予測が立つことに加え、北米の赤字幅が「大幅に縮小、今後、黒字転換できる」(同)と強気だ。欧州もコロナ下で収益構造の変革が進み、「大幅増収、黒字を達成」(同)する。
この結果、22年8月期連結決算の売上収益は前期比3.1%増の2兆2000億円、純利益は3.0%増の1750億円を見込み、2期連続の最高益を目指す。年間配当も前期比40円増の520円を計画する。全般に業績は好調なのに株価は低迷。「中国リスク」が深い影を落としている。
(文=編集部)