セブン・ローソン・ファミマ、“エキナカ”コンビニ争奪戦激化…難攻不落のJR東

エキナカ店舗の運営は難しい

 大手コンビニのエキナカ出店は提携をしたからといって安穏としているわけにはいかない。好条件を提示すれば、提携先でなくても出店する余地もあるからだ。事実、東武鉄道でもっとも乗降客数の多い東武池袋駅はセブンが手中に収めた。

 しかもエキナカ店舗の運営は難しく、撤退を余儀なくされるところも少なくない。ファミマは12年2月から多摩都市モノレールと提携、フランチャイズ契約を結んでいた相鉄ステーションリテールがフランチャイジーとなって出店していた全7店舗(運営は相鉄ステーションリテール)を21年3月に撤退した。

「ファミマと多摩都市モノレールの出店契約は当初5年契約で、それ以降は1年ごとに更新していたが、業績が思わしくなく撤退した」(相鉄グループ関係者)

 ところが、ここにセブンが進出してきた。陣取り合戦で勝利しても経営がうまくいかなくなれば、一瞬にしてオセロのように入れ替わってしまうということだ。

ファミマを追い越した後発セブン

 業界トップのセブンが鉄道会社と提携を始めたのは09年9月。京浜急行電鉄と提携、品川、横浜駅を皮切りに2年間でエキナカ店舗80店舗をセブンに転換することを発表した。さらに10年10月にはJR北海道の子会社、北海道キヨスクとフランチャイズ契約を交わし、札幌エリア内の主要駅に展開している6店舗をセブンに転換した。

 13年10月には新京成電鉄、14年3月にはJR西日本、JR西日本デイリーサービスネットと提携。JR西日本のエリア内(1222駅)にある500店舗をリニューアルすると表明した。さらに同7月にはJR四国、四国キヨスクと提携、15年4月には阪急阪神ホールディングス傘下の神戸電鉄、神戸観光と手を結び、「セブン-イレブン神鉄西鈴蘭台店」を皮切りに6店舗の出店を進めていることを明らかにした。

 15年10月には大阪高速鉄道と提携、大阪モノレール駅構内のコンビニ「モノウェル」を順次セブンに転換していくことで合意、18年3月には小田急電鉄、小田急商事と提携しエキナカ店舗を2年間で100店舗、セブンに転換することを明らかにした。そして21年8月には京王ストアと提携、京王調布駅を皮切りに2年間で40店舗を展開する計画になっている。

 セブンは鉄道のグループ会社10社と提携、札幌、京都、名古屋、福岡などの自治体が運営する地下鉄などへの出店を含め502店舗(2021年3月末時点)を展開。エキナカ店舗の出店でトップを走っていたファミマを後発のセブンは追い越した。これはファミマにとっては大きな脅威であり、「無人レジ」でこれまでコンビニが出店できなかったような拠点に出店を進めようとするのは理解できる。

店舗数より重点拠点確保に力を入れるローソン

 ローソンが鉄道会社と提携を始めたのは04年12月。西日本鉄道傘下の西鉄ステーションサービスと提携し、05年11月には東急電鉄、14年11月には山陽電気鉄道の子会社、山陽フレンズ、15年4月には東京メトロとの提携に成功した。さらに関西方面でも17年3月から大阪市営地下鉄(大阪メトロ)の運営事業者に選ばれ、12年から契約満了で撤退したセブンとポプラが運営していた44店舗を担当。21年5月には阪急阪神HD傘下のエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)との提携を実現、H2Oの子会社アズナスが運営するエキナカコンビニ「アズナス」の98店全店をローソンに転換する。

 一説にはH2Oとの提携はセブンが虎視眈々と狙ってたという。セブンは前述のように阪急阪神HD系列の神戸電鉄との提携、さらに16年10月にはH2Oとの提携まで実現したが、関西の交通の要、阪急・阪神電鉄構内のコンビニ出店はもう一歩というところでトンビに油揚げをさらわれたかたちとなっている。