(1)「なんでもやります」とは言わない
とにかく「なんでもやりますから、仕事があれば紹介してください」という人がいる。気持ちはわかるが、意外に声を掛けにくい。それに、そんな人ほど、仕事を任せると中途半端だったりする。FPとして独立開業するなら、自分の得意分野を作ることは重要で、実はニッチな分野ほど需要が高い。「〇〇については任せてください」など、特定のテーマに特化した方が売り込みしやすい。
(2)FPとしての自分を安売りしない
FPとしての経験やキャリアが浅いため、つい講師料や相談料を安く設定してしまう。重宝がられるかもしれないが、忙しいけど儲からない→量をこなさなければ食べていけない→一つの仕事に時間や手間をかけられない→仕事のクオリティが低下する、といった負のスパイラルに陥る。経験やキャリアを積んだら値上げするはずが、それはいつになるのか……。値上げするとこれまでの仕事が来ないかもとなかなか値上げできない。駆け出しだからと安売りするよりも、FPとして価格に見合った商品やサービスを提供できるよう努力したほうが良い。
(3)仕事も「リスク分散」を心がける
リスクを分散させるのは投資だけではない。筆者のように、金融商品等の仲介をせず、コミッション収入がない独立系FPの場合、「話す(講演等の講師)」「書く(原稿執筆)」「聞く(相談業務)」の3つが中心となる。一般的に、講演等は単価が高く、そちらに比重を置きやすいが、昨年は約半年、コロナ禍で対面のセミナーがすべてキャンセルになった。講師業がおもな収入源だったFPは大打撃を受けただろう。
クライアントも業務も偏りがないよう分散しておいたほうが安心である。
(4)目先のスケジュールを埋めることにやっきにならない
とくに独立して間もない頃は、仕事が入っていて、スケジュール帳が埋まっていないと不安な人が多い。しかし常にFPは新しい情報をキャッチアップしていかなければならないので、勉強会や研修に参加したり、書籍で知識を深めたりするインプットは欠かせない。仕事=アウトプットばかりに気を取られると、手持ちのスキルや能力が枯渇したら終わり。気づけば、次のオファーが来ない羽目に陥る。インプットとアウトプットのバランスが重要なのだ。
(5)仕事は断らない
筆者がFPとして独立した当初に決めていたのは1つだけ。依頼された仕事は断らないということだ。もちろん、スケジュールが合わないものはお断りするしかないが、それ以外はすべて引き受けるようにしていた。自分にプラスになると感じられない案件を断るようになったのは、ようやく最近のことだ。
仕事を選り好みしなかった理由は、収入のためというよりもFPとしての仕事の幅を広げるためである。とにかく、FPの仕事は多岐にわたる。たまに、新人FPさんに仕事を依頼すると、「そんな仕事をしたことがありません。私にできるでしょうか?」と不安そうにするが、FPの仕事など、初めてだらけで、やったことがないものばかり。とにかく、独立系FPとしてやっていくのなら、「できるか・できないか」ではなく「やるか・やらないか」のスタンスで臨んでほしい。
(文=黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー)
●黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー
1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)