石油ショック、再来の兆候…原油価格が在庫急減で高騰、シェールオイル枯渇の鉱区も

 アラブ首相国連邦(UAE)の国営石油会社CEOは「現在のエネルギー危機は将来の供給不足を防ぐために一段の追加措置を促すための警鐘だ」との認識を示した。バルキンドOPEC事務局長は「エネルギーの確保と二酸化炭素排出量の削減といった問題を一度に取り組まなければ予期せぬ結果を招く」とした上で「原油価格は『変遷プレミアム』で押し上げられている」と指摘した。

 ロシアのプーチン大統領も「数年以内に投資不足で原油が不足する可能性がある。原油価格は1バレル=100ドル超えになる可能性が高い」と警告を発した。急速な「脱炭素」の動きの影響で「原油価格は100ドルを突破する」というバンク・オブ・アメリカの数カ月前の予測はもはや当たり前になりつつある。

「年末までに1バレル=100ドルで原油を買う」コールオプション(あらかじめ決めた価格で商品を買う権利)は市場ではもはや「法外」な賭けではなくなっており(10月19日付OILPRICE)、市場関係者の多くは年末までに原油価格は100ドル超えとなることに確信を深めている。天然ガス先物価格は一時、原油に換算して1バレル=200ドルを突破したことから、一部のトレーダーは「2022年12月に1バレル=200ドルで原油を買う」コールオプションにも手を出し始めている。

 OPECプラスの次回会合は11月4日に開催される。仮に増産加速のメッセージが出されたとしても、再生可能エネルギーへの投資拡大ブームの中で化石燃料への投資が抑制されている限り、「原油の供給不足」という懸念は払拭できないだろう。世界は再び「石油ショック」に遭遇してしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー 

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職