石油元売り最大手エネオス、生き残りかけ進める「再生可能エネルギー企業」への変身

石油元売り最大手エネオス、生き残りかけ進める「再生可能エネルギー企業」への変身の画像1
ENEOSホールディングスのサイトより

 現在、石油元売り最大手のENEOSホールディングス(エネオス)は、再生可能エネルギーに強いジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)の買収を検討しているようだ。エネオスにとって、JRE買収は今後の業務展開に極めて重要だ。現在の世界経済では“脱炭素”というゲームチェンジが加速している。環境の変化に対応して生き残りを目指さなければならないというエネオスの危機感は強まっているだろう。

 現在の地球環境はかなり切迫した状況にある。化石燃料の消費などを背景とする温室効果ガスの排出増によって地球温暖化が進み、気候変動問題は非常に深刻だ。豪雨など異常気象の影響によって世界全体で食料品などの価格が上昇し、電力需要もひっ迫している。脱炭素は喫緊の課題だ。その状況に対応するために、2023年にはEUが鉄、セメント、アルミ、肥料、電力を対象に炭素の国境調整の試験導入を開始し、2026年の本格実施を目指す。

 世界的な脱炭素の加速に対応するためにエネオスは既存事業の効率性を高め、再生可能エネルギーを用いた発電などの最先端分野での取り組みを強化し、収益源を多角化しなければならない。今後、エネオスによる買収や異業種の企業との提携などは増加するだろう。今回のJRE買収はその嚆矢に位置付けられる。

エネオスを取り巻く現在の事業環境

 現在、エネオスの業績は改善傾向にある。2021年4~6月期の決算では、原油や銅などの資源価格の上昇が支えとなって、石油・天然ガス開発および金属関連の事業が増益を実現した。金属関連事業では、データ通信の増加を背景に、機能素材需要が高まったことも増益を支えた。

 先行き不透明な要素は増えているものの、現在の世界経済では経済の専門家が“エネルギー危機”と評するほどに天然ガスや石炭などのエネルギー資源の需給がひっ迫し、価格が上昇している。価格上昇には行き過ぎの部分もあるが、夏場の新型コロナウイルスの感染再拡大によって動線が寸断され、その結果として世界的な供給制約は深刻化した。当面、供給制約は続くだろう。それを考慮すると、幾分か価格の調整があったとしてもエネルギー資源の価格は上昇基調を維持する可能性がある。短期的に、それは石油・天然ガス開発事業を中心にエネオスの収益の追い風となる可能性がある。

 その一方で、長めの目線でエネオスの事業展開を考えると、同社は、かなりのスピード感を持って業態を転換しなければならない局面を迎えている。その背景には大きく2つの要因がある。

 まず、過去からのトレンドとして、日本の燃料需要は減少している。その背景には、国内の少子化、高齢化、人口の減少がある。人口が増えなければ、それまでにあった需要は減少し、既存のビジネスモデルの持続性は低下する。

 もう一つの要因が、世界的な脱炭素の加速だ。具体的には、世界各国で自動車の電動化によってディーゼルやガソリンの消費は減少し、充電ステーションや水素ステーションの需要が高まるだろう。以上をまとめると、エネオスは、ビジネスモデルの変革に取り組まなければならない局面を迎えている。新しい収益源を手に入れるために、エネオスはこれまでに蓄積してきた経営資源を脱炭素関連の分野に積極的に再配分して、生き残りを目指そうとしている。

生き残りをかけた買収戦略

 その一つが、JREの買収だ。2012年8月に設立されたJREは主に太陽光発電や陸上の風力発電事業を運営している。それに加えて、同社は日本経済にとって再生可能エネルギー利用の切り札に位置付けられる洋上の風力発電事業の開始を目指している。エネオスは多少のコストを負担したとしてもJREを手に入れて洋上風力発電分野などでの先行者利得を確保したいようだ。その上でエネオスは洋上風力発電の規模を拡大するなどして、より効率的な再生可能エネルギー事業の運営をめざし、収益化を実現しなければならない。それがビジネスモデルの変革に決定的な影響を与える。