米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は7日、声明を発表し、「中国は 21世紀に我々が直面するもっとも重要な地政学的脅威である」と指摘。米国の最大の戦略的競争相手である中国がもたらす安全保障上の課題に対応するため、中国に関する情報収集や分析能力など諜報活動の強化に向け「中国ミッションセンター(CMC)」を設立する方針を明らかにした。
長官によると、CIAは今後1~2年間で、中国語ができる人材の採用や訓練を増やしていくなどCMCのミッション遂行のための人員の拡充や情報の質的向上を目指していくが、「脅威は中国政府によるものであり、中国人ではない」と強調している。CIAが中国に特化した組織を単独で設立するのは初めてで、CMCはCIAの中国での活動を統括する。
これに対して、中国外務省の趙立堅報道官は「CMCは、米国の典型的な冷戦時代のメンタリティの表れである。米国の関連部門は、中国の発展と米中関係を客観的かつ合理的に見て、米中の相互信頼と協力、中国の主権、安全保障、発展の利益を損なうようなことをやめなければならない」と反発している。
米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、バーンズ長官は声明のなかで「CIAの歴史のなかで、CIAはどんな困難にも立ち向かってきた。今日、私たちは大国間競争の新時代のもっとも厳しい地政学的テストに直面しており、CIAはそれに立ち向かうために、再び最前線に立つことになる」と強調。具体的には、技術移転や経済安全保障、気候変動などの問題が主要課題になるとの見通しを示した。
すでに、米政府内ではここ数年、中国の脅威に対抗するための活動が活発化している。米司法省は2018年、中国の経済スパイなどに対抗するため、「チャイナ・イニシアチブ(対中戦略)」を開始。経済スパイとして起訴したうち約80%が中国に利益をもたらしていると警鐘を鳴らしている。
また、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官も今年9月、FBIが「中国共産党に対する防諜活動は12時間ごとに行っている」と述べるなど、中国の活動に神経を尖らせている。
このような経緯を踏まえて、バーンズ氏も2月に行われた指名承認公聴会で、「中国との競争は、今後数十年にわたって我々の国家安全保障上のカギとなる」と述べたうえで、「この数年間の習近平最高指導部による中国の変化は、米国と対立するようになり、攻撃的でもある。このような中国のアグレッシブで臆面もない野心と自己主張は、我々が直面している対立的で競争的な性質を非常に明確に示している」と語って、習指導部に対して強い警戒感を示している。
また、バーンズ長官は今年4月に米議会で行われた「世界の脅威に関する公聴会」でも、「米中の対立はますます科学技術やサイバーセキュリティ問題に集中しており、CIAのマンパワーのほぼ3分の1がすでにテクノロジーとサイバー問題に取り組んでいる」と明らかにした。
CIAの当面の課題としては、中国の台湾侵攻の作戦に関する情報収集となるだろう。RFAによると、中国人民解放軍の台湾侵攻の可能性について、米国のトランプ政権時代の高官や現役の米軍幹部らが次々と危機感を表明している。
18年の米国家防衛戦略の策定で責任者を務めたエルブリッジ・コルビー元国防副次官補は9月中旬、米ワシントンDCで開催された「グローバル台湾研究所(GTI)」の第5回年次総会で、中国軍が台湾海峡を封鎖し、台湾をミサイル攻撃して軍が台湾を制圧。米国が介入する前に台湾を占領してしまうという速攻作戦を展開する可能性が高いと指摘した。