日本、地震の活発期に入った可能性…首都直下地震の震源地、伊豆諸島周辺も有力か

 南海トラフ巨大地震に備えて西日本の太平洋沿岸で津波対策が議論されているものの、伊豆半島周辺についての対策は議論の俎上にすら上っていないのが現状だ。角田氏は最近、「深発地震」と地表で起きる「巨大地震」との関連を解明しようとしている。米地質調査所(USGS)が2012年から、世界で発生した地下660キロメートルまでの地震データを公表されるようになったことがきっかけである。「深発地震の規模や頻度など詳しく分析することで、地殻から地球の表層に運ばれる熱エネルギーの動向をある程度把握できるようになる」と角田氏は主張する。

 データ分析の結果から、地表から400~660キロメートルの深部で、M5.5以上の「深発地震」が1カ月の間に5回以上続けて起きると、1年以内に地表で巨大な地震が発生するという関係が明らかになっている。ちなみにこの関係は、東日本大震災や熊本地震、阪神淡路大震災のいずれの場合でも成立していた。「熱移送説2.0」に関する一般向けの解説書が年内に出版される予定である。

 気になるのは足元の状況だ。9月14日に東海道南方沖(M6.2、震源の深さは450キロメートル)、9月29日に日本海中部(M6.1,震源の深さは400キロメートル)で深発地震が発生している。

 角田氏は「巨大地震が近く起きる可能性は低い」としながらも「東日本大震災以降、10年ぶりに日本列島は地震の活発期に入った可能性がある」と警戒している。新型コロナウイルスのパンデミックが続く状況下で、世の中をいたずらに騒がせるつもりは毛頭ないが、「備えあれば憂いなし」との願いから、拙稿をしたためた次第である。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー 

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職