実は店員待機、万引きリスク…ファミマ・1千店「無人レジ店舗」の全貌と誤解

無人レジ店舗の課題

 8月13日には西武鉄道と提携し出店していたフランチャイズの「トモニー中井駅店(東京都新宿区)」にも無人レジを導入しリニューアルオープンした。

「トモニー中井駅店(東京都新宿区)」に無人レジを導入したことで、ファミマと提携する他の鉄道会社からの問い合わせが増え、ファミマは駅ナカでの店舗展開の加速を期待しているという。しかし課題も山積している。

「必要なカメラの数は天井の高さと店舗の広さによって決まるために、標準的な店舗の3000アイテムまで増えても対応は可能だ」(TTG広報担当者)という。しかしコンビ二の業界関係者は、通常店に導入するには解決しなければならない課題があるという。

「通常のコンビニは約3000アイテムを取り扱っていますが、このうち1週間で100アイテムが入れ替わってしまいますから、これを毎週改めて登録していかなければならない。しかも陳列棚が変わればその情報も入力しなければならない。商品を手にとったお客さんも、いつも決められた場所に置くとは限らないので、そうした情報も必要となっていく。見た目ほど簡単なもんではないと思います」(コンビニ業界に詳しい事情通)

 しかも万引きのリスクも少なくない。ファミマは「天井には複数のカメラがあり、ゲートは決済しなければ通過できないようになっている。簡単には万引きはできない仕組みとなっている」(同社広報担当者)と説明する。

「無人レジでは複数の客が重なってしまうと誰が商品を取ったかわからず、AIカメラが認識できない。決済せずに商品を持ち出すことができるわけです。これを意図的にやられてしまうと万引きのリスクが高まる」(コンビニ業界に詳しい事情通)

 そのため10人という入場制限を行っているが、入場制限は販売機会損失につながってしまう恐れがある。入場制限の撤廃や収益性については現在ファミマは検証を続けているというが、業界トップに躍り出る起爆剤になるのか、今後が注目される。

(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

●松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。